英語が聞こえない方へ
暗記した英語しか聞こえない方へ
英会話の学習者の中には、TOEICのリスニングで満点を取ったにもかかわらず、初級のヒアリングのテストをすると、英語が聞こえないことが判明することがあります。このタイプの人は、暗記した英文は聞こえるので、TOEICのリスニングで満点を取ることさえ可能ですが、自分が暗記していない言い回しは、中学レベルの英語でも聞こえません。
株式会社渡辺米会話の研究によると、「読めないものは、聞こえない」がヒアリングの基本です。また、10級に合格した方は日常会話レベルの英文は読めるので、1年もすれば日常会話ができるようになります。ところが、10級に合格したにもかかわらず、暗記した英語しか聞こえない方がいます。「英語が聞こえない方へ」は、このタイプの方ために、なぜ聞こえないかを自己診断する方法と、診断結果に応じたトレーニング方法とを説明します。
1.英語が聞こえない2種類のタイプ
株式会社渡辺米会話研究所の研究によれば、英語が聞こえない人は、「英語の音声認識に問題がある人」と「英文の認識スピードが遅すぎる人」の2種類に分かれます。まず、学習法を決める前にどちらのタイプに属するのか自己診断してみましょう。
ステップ1
MyPageの左側にあるメニューの「学習コース一覧」をクリックし、「11級検定試験」をクリックしてください。
ステップ2
解答を入力して、「答え合せする」ボタンをクリックしてください。正解であれば音声が流れます。
はっきり聞こえない単語があるかどうかを確認し、「次に進む」ボタンを押し、次の問題にはっきり聞こえない単語があるかどうかを確認してください。
10問聞いて、はっきり聞こえない単語がある方は、英語の音声認識に問題があるので、特別な発音練習が必要です。
単語がすべてはっきり聞こえる方は、英文の認識スピードに問題があるので、英語をアメリカ人のように頭から理解する訓練が必要です。また、英語の音声認識に問題がある方は、英文の認識スピードにも問題があるので、同じ訓練が必要なことが分かっています。
2.英語が聞こえるようになるための発音練習の仕方
英会話のCDを聞いている人は、英語の音声を聞いているようですが、ほとんどの方は、聞いた音を瞬間的に日本語の音に訳して聞いています。一例を挙げると、"L"や"R"の音は日本語にないため、両方とも同じラ行の音に翻訳されます。その結果、聞き分けができない方がほとんどです。
"L"や"R"の音を、成人になってから、日本語のように新しい音素として確立するのは不可能に近いのですが、音声構造に関する部分は、成人になってからでもも習得することが可能です。習得すればヒアリング能力が飛躍的に向上することが株式会社渡辺米会話研究所の研究で分かっています。
その中で最も効果的なのは、子音が連続して続く構造です。日本語のカ行をローマ字で書くと「ka ki ku ke ko」のように[子音+母音]という構造をしていることが分かります。日本語の音声は「ン」を除くとすべて[子音+母音]という構造をしています。その結果、日本語には子音が連続して続く構造がほとんど現れません。これが、日本語と英語の音声構造の最も大きな違いであり、英語が聞こえない最大の原因でもあります。
英会話の本の中には、会話では“GIVE HIM”やGIVE THEM”が、[ギブイム]や[ギブエム]のように[h]の音が発音されないと書いてあるものがあり、実際CDを聞いて、やっぱりそうだと思った方がいると思います。
GIVE[giv]を[givu]と発音していると“GIVE THEM[givðem]”と[ð]が発音されたとき、潜在意識が[vu]の[u]の音を無意識に予測し、[ð]の音を[u]の音として翻訳してしまうため、[ギブエム]のように聞こえたり、何を言っているのか分からなかったりします。
GIVE THEM[givðem]”が聞き取れるようにするには、まず、[vðem]と正確に発音を繰り返す練習をします。[v]は上の歯で唇を押さえ、[ð]は舌先を上の歯に付けて、軽く引ながら発音します。日本語には[vð]のような連続した子音がないので、[v]と[ð]の間に[u]の音を入れないように注意します。[m]は[mu(む)]ではなく、「しんぱい」の中の[m(ん)]なので、唇が閉じていなければなりません。だから[vðem]正確に発音すると、発音し終わったとき、唇が閉じていなければならないのに、唇が自分の意図に反して、開いてしまう人がいると思います。意識は、[vðem]と発音しようとするが、潜在意識は[buzemu]と発音しようとするからです。[vðem]がスムーズに発音できるようになったら、[givðem]と繰り返して発音します。CDを聞くと、今度はかすかに[h]の音が聞こえるはずです。
有料登録をされている方は、「基礎文型を使った英作文1」の最初の問題を表示し、解答を入力してください。正解であれば、"my notebook[mai noutbook]"という音声が流れます。"notebook"の[t]の音が聞き取れない方が多いと思います。もうお分かりと思いますが[tb]という連続した子音が日本語にないのが[t]の音が聞き取れない原因です。
聞き取れない方は、まず「トゥブ」と声を出さないようにささやいてください。すると舌先で出す[t]だけの音と唇だけで出す[b]の音を、[t b ]のように[u]の音が抜けて発音できます。次に[t]と[b]の間を詰めて[tb]と発音できるまで繰り返し練習します。
[tb]が発音できるようになったら、次は「ク」と声を出さないようにささやいてください。そのとき出た音が[k]の音です。
次に[tbuk]と、[t]と[b]の間が空かないように注意して、繰り返し発音練習をします。
次に[noutbook]の発音練習に入りますが、その前にストレスアクセントとピッチアクセントの違いについて説明します。
「雨」と「飴」ではアクセントが違います。「雨」は「あ」にアクセントが置かれ、高く発音されますが、「飴」は「め」にアクセントが置かれ、高く発音されます。このような音の高低によるアクセントをピッチアクセントと言います。
英語のアクセントはピッチアクセントではありません。音の大小で行うストレスアクセントです。ストレスアクセントになれていない方が、英語を聞くと、アクセントが置かれている部分が大きな声で発音されるので、耳が幻惑されて、アクセントが置かれていないところが聞こえにくくなります。この問題は、発音練習をするとき、アクセントのある部分を強く長めに練習することで改善します。
"my[mai]"の[ai]は二重母音と呼ばれる一つの母音です。なぜ一つの母音かと言うと、二重母音は前の母音にアクセントが置かれ、大きな声で長めに発音されるためです。この感覚をつかむために、ゆっくりと[ai]を二重母音風に[あーい]と発音してみましょう。感じがつかめたら"my[mai]"同じように[まーい]と発音してみましょう。
[noutbook]の[ou]も二重母音なので[おーう]と発音練習し、慣れてきたら[のーう]の練習をします。[noutbook]全体のアクセントも前の音節にあるので、[のーう]は強く、ゆっくり目に発音されます。これが[t]が聞きにくいもう一つの原因になっています。
[noutbook]は[nou tbook]のような感じで、[t]の前で二つに分け、[t]と[b]の間が空かないように注意して、発音練習をします。スムーズに発音できるようになったら、「||」をダブルクリックして聞いてみてください。[t]の音がかすかに聞こえるはずです。
この段階では、連続した子音が意識の段階にあるので、聞こえ方には限界があります。繰り返し練習し、無意識に発音しても連続した子音として発音できるようになれば、[t]の音はさらに聞きやすくなります。
聞こえない単語や英文があったら、辞書で発音記号を調べ、子音が続くところを見つけ、上記の方法で練習してみてください。
3.英語を頭から理解するための訓練法
英語の音声認識に問題がないのに、英語が聞こえない人は、英文の認識スピードに問題があります。 アメリカ人は、日常会話に頻繁に使われる500語レベルの単語を、一分間に150ワード前後のスピードで話します。英語の聞こえない方は、難しい単語が聞こえないと思っていますが、実は、中学で習っているやさしい単語が聞こえないのです。
株式会社渡辺米会話研究所は、英会話を勉強しようとする方のリーディング・スピードを長年にわたり、チェックしてきました。その結果、大学に入学できる学力を持った方の1000語レベルの英語のリーディング・スピードは1分間に120ワード前後で、140ワードを超える人は滅多にいないことが分かっています。
また、140ワードを超えていて、25歳未満であれば、日常会話はすぐ聞こえるようになることも確認しています。リーディング・スピードがヒアリング能力の上達に関係しているのは、初心者が英語の音声をスペルのイメージにして意味を取るためです。
このスペルのイメージを後ろから訳していたのでは、訳している間に次の 文が話されるので、会話について行くことができません。
では、どのようにすれば、会話について行くことができるのでしょうか。もうお分かりのように、英語を頭から理解するのが唯一の方法です。英会話学習者の多くは、英語を頭から正確に聞き取ることができず、聞こえる単語から相手の言っていることを想像し、あたかもすべて理解しているような振りをして、英語を話しています。
この壁を越えるには、会話に使われる超短期記憶について理解することが必要です。心理学者George Millerによると、人が一度に覚えられる情報の数は7±2で、チャンクという単位を使って数えます。
例えば、“Are you going to study English in the U.S. next year?”という質問をCDを繰り返し聞くと書き取ることはできるが、実際に質問されると、完全には聞き取れない方がいたとします。CDを繰り返し聞きながら書き取ることができる人は、それぞれの単語を音として認識できます。しかし、単語が聞こえても、7チャンクまでしか一度に覚えられない方は、 “Are you going to study English in the”まで来たときに、その人の記憶容量を超えてしまうので、八つの単語の中のどれかが超短期記憶の中から抜け落ちてしまいます。そのためすべての単語が聞こえるはずなのに、実際には、はっきり聞こえないという現象が起こります。
それでは、なぜこの英語が聞こえる人がいるのでしょうか。実は、一つの単語が1チャンクになるとは限りません。例えば、10級に合格できるレベルの人は、[Are you going to+動詞の原形]というパターンで繰り返し、意味を考えながら発音練習すれば、“Are you going to study”までを1チャンクとすることができます。
それでは、“Are you going to study English in the U.S. next year?”を後ろから日本語に訳して、一つのフレーズとして発音練習をして丸暗記すれば、1チャンクになるので、アメリカ人が早口で言っても聞こえるようになるのではないかと考える人がいるかも知れません。
まさに、その通りで、この方式でTOEICのリスニングで満点を取り、大阪のジオスでTOEICの講師までした三平さんという方がいます。この方が転勤で、八王子に来たとき、レベルが高すぎて八王子のジオスでは受け入れられなかったので、近くにあった株式会社渡辺米会話研究所が経営している英会話スクールに来ました。中学レベルのストーリーをゆっくり2回読んで、簡単な質問をしたところ、TOEICの講師までされた方が答えられないのです。
理由は簡単です。丸暗記方式では、“Is your friend going to study English in England next year?と英文を少し変えただけで聞こえなくなってしまうため、最初に読んだ中学レベルのストーリーが理解できなかったのです。
応用が利くようにするには、英文の構造を文法的に認識しながら、頭から意味を取るようにすることが必要になります。“Are you going to study English in the U.S. next year?”の場合だと、例えば“Are you going to”で「未来について尋ねている」とイメージを取り、“study English”で、「(尋ねてい内容は)英語を勉強する」、“in the U.S.”で「(勉強する場所は)アメリカで」のようにイメージを正確に取って行きます。
この例から、英語では重要なことが一番先に来て、さらに細かな説明、さらに細かな説明というパターになっているのが分かると思いますが、このパターンに慣れると、頭から正確なイメージを取っていくことができるようになります。“in the U.S.”のような前置詞句でも、“in”が「場所について」と示してから“the U.S.”と詳細が示されます。
10級に合格できるレベルの方は、文法的に英文の構造を把握することができるので、その構造に基づいて、声を出しながら、頭からイメージが取れるスピードで反復練習を行うことができます。
この練習を丸暗記に終わらせないためには、同じ文型で10ぐらいの文章を練習することが必要です。文型練習で部分的なイメージを置き換えて反復練習をすることで、この文型を使って英語で考えることができるようになるだけでなく、この文型を1チャンクとして定着させることができます。英作文.netの「基礎文型を使った英作文1~3」は、この練習ができるように、一つの文型に対して10の英文が用意されています。また、中学1年から3年までに習う文型が体系的に学習できるので、英会話で必要な基礎文型を網羅的に身につけるにはもってこいです。
この練習のもう一つのメリットは、アメリカ人が使う英語の75%を占めると言われる基礎単語の500語を繰り返し練習することになるので、英語の最も聞きにくい部分が聞きやすくなることです。アメリカ人が大学へ入って習うような難しい単語は、発音スピードが遅いので、知ってさえいれば聞こえます。
それでは、「基礎文型を使った英作文1~3」のどこから始めたらいいのでしょうか。まず、「基礎文型を使った英作文1~3」の「♪模範解答」を順番に聞きます。
あなたが英語の音声から意味を取るスピードが、話される英語の音声のスピードより遅いと、意味が取れないか、意味が取れても英語が速く聞こえるかのどちらかになります。ですから、音声を順番に聞いていって、どちらかの現象が起こったら、英語での思考スピードが遅いことが確認できるので、そこから練習を始めます。
この練習は、長期記憶に入ったことと、英語での思考スピードが十分速くなったことの2点を確認しながら進めないと、最期までやったのにヒアリングの能力があまり上がっていないという結果になります。
このタイプの練習を株式会社渡辺米会話研究所の経営する英会話スクールで100人近い人にさせましたが、毎日練習して、長期記憶に入るまでに約5日間、思考スピードが十分上がるまでに2週間かかります。個人差があるので、実際には、ご自分でチェックをしながら進めなければなりません。
長期記憶に入ったかどうかは、日本語の問題を見ただけで模範解答文が口をついて出るかどうかで判断できます。英語の思考スピードが上がったかどうかは、模範解答がゆっくり聞こえるかどうかで判断できます。2週間ぐらいすると突然ゆっくり聞こえるようになるはずです。
一度に何問練習するかは、本人の能力と時間的な余裕によりますが、一般的には、1日10問から30問ぐらいが適切です。それを2週間前後繰り返し練習しなければならないので、長期間の練習になるという覚悟が必要です。