「中光先生は、驚いたのではありませんか」と町会長。

「今考えると、ぎょっとしたと思います。」

「渡辺さんは素人だから、どう打ってきても防げると思っていたら、剣道の心得があるかのように構えたということですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。防具をしないで、好きなように打ってくるようにと言ったのは、父と同じで剣道の有段者だからだと思います。素人が相手なら、どう打ってきても、打たれることはないという確信があったのだが、念のために、スポーツが一番苦手そうな僕を選んだら、『こいつ、剣道をやっているのではないか』と思ったのではないかと思います。」

「なるほど。それで、中光先生は、どうしたのですか」と町会長。

「父とは違い、1分くらいにらみ合ってから、面を打ちに来ました。」

「今更、相手を変えることはできないということですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「小学4年生のとき、想定した状況になったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。僕は、想定通り、一歩踏み込んで小手を取りました。」

「中光先生は、驚いたでしょうね」と町会長。

「中光先生は、『渡辺の方が速かった』と言いました。そして、剣道の授業は、2度と行われませんでした。」

「それでは、『一度も練習もしたことがない子供に一本取られたら、父親としての権威がなくなってしまう』と考えたことに間違いはないということになりますね」と町会長。

「実は、ずっと、そう考えていたのですが、目が陽になってから、考え違いをしていたことに気がつきました。」

「『考え違いをしていた』と言いますと?」と町会長。

「父は修羅場をくぐっているので、僕の才能に気がついたのだと思います。」

「中光先生は、渡辺さんの才能には気がついていませんね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「正眼に構えただけで才能が分かるものなのですか」と町会長。

「単に正眼に構えただけでなく、父の動きを待って、何かしようとするところまで気がついていたと思います。」

「なぜ、そこまでわかるのですか」と町会長。

「相手の目を見れば、分かる人は分かるのだと思います。」

「なるほど」と町会長。

「実は、目が陽になって、やっと気がついたのですが、父は居合の名人だったのです。」

「剣道は2段だったが、居合が名人などということがあるのですか」と町会長。

「渡辺家は、平安時代あたりに端を発する小刀を使った抜刀術を、代々伝えてきたのだと推定しています。」

「小刀を使った抜刀術ですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。僕が父と立ち会った翌年だったと思いますが、お祭りの日に、父は剣舞を披露しています。」

2021/5/13

<筆者の一言>
体重は食べた分だけ増えるというのが基本的な考え方になる。1グラム水を飲めば1グラム体重が増える。だから、ボクサーは試合直前になると脱水状態で頑張っている。

しかし、毎日食事をしたからと言って、体重が増え続けて何百キロにもなった人はいない。食べたり飲んだりしたものは、生体を維持するための代謝に従って排泄されているのだ。尿や便という形だけでなく、汗や炭酸ガスとなって排泄される。抜け毛や垢としても排泄される。だから、食べた時体重が増えると、その分、体重はどこかで減っていなければならない。体重は1日の中で変動しているのだ。<続く>

<筆者の一言(2)>
頻尿は完全に治ったと思ったが、完全には治っていなかった。翌日も翌々日も今日も、朝方、1回起きている。脳の神経系が緩み始めたので頻尿は完全に治ったと即断してしまったが、脳の神経系はかすかに緩んだだけのようだ。

動体視力も体力も上がり続けているので、相変わらずミスはある。薬も飲んだことは覚えていることが多くなったが、たまに忘れていることがある。薬のボトルに数字を書いておいて飲むごとに回すようにしているが、ボトルを回すのを忘れていることもある。飲んだことは覚えている事が多いので、回していないのに気がつけば修正はできる。詰碁は、解いた記憶があるものが多くなっている。肝機能が上がっているので、すべてがわずかながら良くなっているのは間違いない。

2024/4/30