「ウィキペディアの『剣道』によると、1953年(昭和28年)11月6日に第1回全国警察官剣道大会が警視庁体育館で開催され、11月8日に第1回全日本剣道選手権大会が蔵前国技館で開催されています。」

「お父さんは、剣道2段でしたよね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それでは、全日本剣道選手権大会に出ても、優勝は難しいのではないでしょうか」と町会長。

「おそらく、子供のころに祖父から剣道の段を取ってはならないと言われていたのだと思います。」

「抜刀術を秘密にしておくためですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。祖父も日清戦争に行っているので、そこで清朝の武人と真剣での立ち合いをしているはずですが、誰にも知られないように立ち合いをしていると推定しています。」

「お父さんは、関東軍の軍人や馬賊に名前が知られるような方法で立ち合いをしてしまったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。日本に帰って来て生活が落ち着くと、中国人が敵討ちに来ることが気になりだしたのだと思います。」

「それでは、全日本剣道選手権大会に出て、優勝しようとしたのではないのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。中国人が敵討ちに来た時、討たれないように抜刀術に磨きをかけておかなければならないと考えていたはずです。」

「そのために、消防士になったということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。父は、できれば、全日本で優勝した人と定期的に練習試合をしたいと思っていたと推定していますが、人が注目するようなところで練習試合をするのを避けようとしたのだと思います。」

「馬賊の頭目の敵を討とうとする中国人に見つかりたくなかったということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。潔く立ち会おうという気持ちはあったようですが、負ければ、後に残った家族が心配だし、勝てば、殺人犯として逮捕されてしまいます。」

「それで、消防士のような目立たない職業を選んだということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。父は、このとき、金もうけとか出世を諦めて抜刀術一筋で行くことを決意したのだと推定しています。」

「消防士になれば、抜刀術一筋で行くことができるのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。抜刀術のレベルを下げないためには、毎日、10キロぐらいは走って、動体視力を高くしておかなければなりません。」

「警察官が、毎日、走っていることがわかったら、変だと思う人がいるかも知れないが、消防士が体力を維持するために、毎日、走っても、変だと思う人はいないということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。燃え盛るビルの火事を消すのに、重いホースを持って階段を駆け上らなければならないので、体を鍛えていると言えば、誰もが納得するでしょう。」

「なるほど。」

「そして、抜刀術の技術が上がり、敵を討ちに来た中国人を手玉に取ることができれば、命を取らずに中国に帰せるかもしれないと思ったのだと推定しています。」

2021/6/14

<イエスズメ外伝4>
もう一つ、気がついたのは、鳥類の主食は昆虫ということだ。雑食で知られているカラスでさえ、主食は昆虫ということだ。ハクセキレイがいないのも、うぐいすの鳴く声がたまにしか聞こえないのも、主食の昆虫が少ないからだ。

冬場は、昆虫が少ない。てんとう虫やハチなどのように成虫のまま冬を過ごす昆虫もいるが、チョウのようにサナギで冬を過ごす昆虫もいる。調べてはいないが、鳥類はサナギも食べているに違いない。飛行技術に優れたイエスズメは、サナギも先に見つけて食べてしまうのだろう。

カマキリやバッタのように卵で冬を過ごす昆虫もいる。調べてはいないが、鳥類は卵も食べているに違いない。飛行技術に優れたイエスズメは、昆虫の卵も先に見つけて食べてしまうのだろう。

イエスズメ以外の鳥は、餌のある地域に移動するしかない。うぐいすのように移動する鳥は、去年いたところに戻ろうとはするが、主食の昆虫が少ないので我が家の周りには近づかないのが多いのだろう。<続く>

※この原稿をアップロードする前に、山寺がある向かいの山の中腹まで登ってみた。お寺の横の孟宗竹の立ち並ぶ竹やぶでイエスズメが鳴いていた。もしかしたら、イエスズメの勢力圏は、人家のある所、日本全国どこまでも続くのかも知れない。

24/5/30