「東京大学海洋研究所海洋底科学部門の徳山教授の『地中海の深海底に巨大湖』という論文が公開されていますが、『ギリシャ沖地中海の水深約2900mの深海で巨大塩水湖を発見しました。計測結果によれば、塩水湖を満たす海水の塩分濃度は、死海のそれを上回り、通常海水塩分濃度(約 3.5%)の10倍弱の値を持つこと、溶存酸素濃度はほぼゼロであることが明らかとなりました』という説明があります。」

「地中海の深海底に巨大湖というのは、ジュール・ヴェルヌの海底二万里に出てきそうな話ですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。全長80km余り、幅平均約1km、水深100mの巨大塩水湖が水深約2900mの深海にあったのです。」

「この塩水湖は、突然できたのではないのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。塩水湖が地中海の海底にあることは昔から知られていたようですが、いつできたという記述はありません。」

「昔からあったということは、この塩水湖が存在することが、塩分は水中で拡散するのが極めて遅いということを実証しているということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。『2920m~2928mには塩分濃度が急激に増加する湖の表層水が存在する』という記述があるので、拡散するのが極めて遅いということが分かります。」

「なるほど。拡散するスピードが速ければ、塩水湖は存在できないということですよね」と町会長。

「おっしゃる通りです。『湖面の直上には35mに亘り塩分濃度が徐々に増加する漸移帯が存在する』という記述があるので、拡散しているのは間違いないと思うのですが、『塩分濃度が急激に増加する湖の表層水が存在する』ということから、拡散スピードが極めて遅いことが推定されます。」

「なるほど。湖の海水の温度はどのくらいなのですか」と町会長。

「水温15.26°Cです。」

「水深が2900mもあるのに、水温が高いのですね」と町会長。

「ウィキペディアの『深海』には、『水深3,000メートル以深では水温は1.5℃程度で一定になる』と書いてあるので、不思議ですね。」

「水温15.26°Cで拡散しないので、熱塩循環が水温が低い深海を流れているのであれば、1200年経っても熱塩循環が拡散しないで循環を続けるのに不思議ないということになりますね」と町会長。

「おっしゃる通りです。地中海の海底下には岩塩層が存在するので、比較できないところがありますが、参考にはなります。」

「いずれにしても、1200年経っても熱塩循環が拡散しないで循環を続けるのは、塩分が拡散するのが極端に遅いためということですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。現在のところ、他に理由は思いつきません。」

「北大西洋で海水の沈み込む速度と熱塩循環のスピードに連動性があるということが、寒冷化が起こる原因とお考えなのでしょうか」と町会長。

「おっしゃる通りです。ウィキペディアに、『後氷期の初期、グリーンランドや北アメリカ氷床の融解によって低密度の淡水が大量に流入し、北大西洋での深層水の形成や沈み込みを極度に阻害したことがわかっており、これがヨーロッパで知られる気候「ヤンガードリアス」イベントを引き起こしたと考えられている』と書いてありますが、海水の沈み込む速度と熱塩循環のスピードに連動性があるという前提がなければ、この説明は成り立ちません。」

2020/8/6

<ムクドリ71>
イエスズメは裏庭につながる栗林に来るようになり、栗の木の大木や梅の木の大木のてっぺんで『ピヨピヨ』と鳴くようになった。

5月のある日、裏庭に出てみると、『ピヨピヨ』と鳴く声が全く聞こえなかった。空に目を向けると、栗の木のてっぺんよりやや高いところを鴉が数羽飛び回っていた。イエスズメは、それから3時間ほど『ピヨピヨ』と鳴く声が聞こえなかった。そして、数日たった日、また同じように鴉が数羽飛び回っているのを目撃した。

3度目に見たときには、鴉が栗の木の中に何度も突入するのを目撃した。鴉は人を恐れて表の庭や裏庭には来ないが、裏庭に続く栗林には来る。古代人は鴉くらいの大きさの鳥は、弓矢で撃ち落とせたのだろう。鴉は食べたことがないが、地方によっては刺し身で食べたりするようだ。食料の生産性が低かった古代においては、一般に食べられていたに違いない。

そういえば、去年も鴉が栗林に来ていたのだ。6月1日を過ぎた頃から、僕は自分の思い違いに気が付きつつあった。<続く>

2023/7/20