「先ほど話したように、脳に感染しやすいような変異があるのが原因だと推定しています。また、新型コロナウイルスは、気温が高いと脳内で増殖しやすくなると推定しています。」

「シンガポールは日本より気温が高いですね。気温が高いと脳内の温度が高くなるのでしょうか」と町会長。

「一般的には、脳内温度は37°C付近で常に一定であると考えられています。」

「それでは、気温が高くても脳内で増殖しやすくなるということはないのではないでしょうか」と町会長。

「鋭いご指摘です。しかし、脳内温度は37°C付近で常に一定であると言われるのは、脳内温度の測定が難しいので、研究が進んでいないためだと推定しています。」

「脳内温度の測定は難しいのですか」と町会長。

「プロトン磁気共鳴分光法で測定できますが、巨大な装置が必要なので、臨床では脳温にほぼ等しいと考えられる鼓膜や内頸静脈の温度を測定しています。」

「なるほど。それでは人間の日常活動で脳内温度がどう変化するかというような研究はできないということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。心臓から脳に行く動脈は頸部を通りますから、外気温の影響を受けると推定しています。」

「外気温が高ければ、脳の温度が高くなるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「進化論的に考えると、人類は4つの長い氷河期を経験していますから、気温低下による淘汰により、脳は寒さにはどちらかというと強いと考えられます。」

「暑さには、どうなのでしょうか」と町会長。

「人間は、気温が低いときは代謝熱で体温を保つことになりますが、暑い場合は発汗によって、体温を下げることになります。産業医学総合研究所の澤田晋一の『暑熱、寒冷環境下での作業に伴う健康リスクと予防方策』に、『屋外作業での熱中症発生時の気象条件を調べた筆者らの調査研究では、気温が30℃を超えると熱中症発生件数が急増するが,30℃より低くても被災するケースが少なくないことがわかった』と書かれています。」

「人間は暑さに弱いのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。21世紀は、氷河時代の中の間氷期と言われる気温が高い時代なので、一般的に言えば、21世紀の気温は人間にとって高すぎる時代だと言えます。」

「第4間氷期はどのくらい続いているのですか」と町会長。

「1万年ぐらい続いています。」

「それでは、現代人は間氷期に適応しているのではありませんか」と町会長。

「おっしゃる通りです。暑さに適応できなかった人間は、間氷期に入ったときに死滅しているはずです。しかし、気温が30℃を超えると熱中症発生件数が急増することから、生き延びることができた人の中に、気温が高くなると脳の機能が低下する人がいることは否定できないと思います。」

「なるほど。気温が上がっても生命に問題は起こらないが、脳の機能が低下する人がいるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。脳に対する気温の影響は、一桁の数を足す作業を3時間行わせた場合の気温の影響に関する研究があります。20℃と25℃では、20パーセント未満の差ですが、30℃になると、30パーセント近くになるそうです。しかしながら、一桁の数を足す単純作業は、脳の機能だけでなく、飽きやすいとか真面目というような性格的な問題が関係してくることもあり、必ずしも同じ結論にはならないようです。」

「なるほど。気温と脳の機能低下は必ずしも明確とは言えないということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。しかし、30℃を超えると熱中症になる人が急増するので、脳が気温が高いと機能低下することは明らかですが、20℃前後で脳の機能がどのように変化するのかとか、何度が人間の脳にとって最適なのかということの結論は出ていないようです。」

「熱中症になれば、脳の機能が低下するのは明らかなのですか」と町会長。

「実は僕も熱中症になったことがあります。」

「東洋医学に習熟していても熱中症になることがあるのですね」と町会長。

2020/4/24