「ブラックバーンが不老不死をあきらめていないのは、免疫による体の防衛システムを研究しているところから分かります。老化した人のテロメラーゼを若いときと同じレベルまで上げたときに、がんになる可能性が高くなるのは免疫力が下がっているためです。実際、国立がん研究センターが公開しているグラフを見ると、10代や20代で肺がんになって亡くなる人はほとんどいません。グラフで死亡者数が目立つようになるのは、50代あたりからで、70代ぐらいになると急激に増えていきます。」

「70代ではテロメラーゼが減っていてがんになりにくくなっているはずなのに急激に増えるのは、免疫力の低下の方が大きいということですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。ブラックバーンは『年を取ると免疫力が低下しているので、テロメラーゼを増やすとがんになりやすくなる』とは書きたくなかったのだと思います。真剣に、テロメアを増やして長生きしたいと思う人の多くは、何年か先に死ぬことになるかもしれないと思う高齢者ではないでしょうか。」 

「ブラックバーンは高齢者に優しい本を書いたのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。読んだ人がどうにもならないと思うような本を書いてもしょうがないでしょうから。しかし、本人は長生きしたいから、必死で免疫力を上げる方法を研究しているのだと思います。ブラックバーンは、うつ病とテロメアの関係に深い関心を示していますが、この病気も免疫力と関係しているようです。」

「うつ病が免疫力と関係しているのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。ブラックバーンによれば、オックスフォード大学が中国の大学と共同研究し、12,000人の中国人女性を対象にした研究で、うつ病の女性はテロメアが短いことを確認したそうです。また、うつ病が重篤で、かつ発病期間が長くなるほど、テロメアは短くなっていたそうです。しかし、注意深く読んでみると、ブラックバーンが興味をひかれたのは、うつ病の人のテロメアは短いが、免疫細胞の中のテロメラーゼは多くなっていることです。」

「免疫細胞の中のテロメラーゼが増えれば、テロメアが増えて、免疫力が上がるはずですよね」と町会長。

「残念なことに、免疫細胞のテロメアは短いままだったようです。」

「テロメラーゼを増やしても免疫力は強化できないということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。適切な運動や睡眠とストレスや栄養不足や苦労のない生活をすれば、テロメアが回復するとブラックバーンは言っていますが、その結果テロメアが増えて若返った人がいるとか、自分自身が若返ったというようなことは言っていません。ウィキペディアの写真とテロメア・エフェクトの写真を比べて見ると、ブラックバーンも普通に年を取っているようです。」

「免疫細胞のテロメアも、他の細胞と同じように、加齢とともに短くなってしまうということですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「免疫力を強化する方法はないということですか」と町会長。

2019/10/16