<試合はキャンセル>

月末は忙しいので、今月の試合はは21日という話になっていたが、梅澤さんから電話が入って、「急に仕事が入ってしまったので、今日の試合はできない」ということだった。「来月は3日から18日までセールが入っているので、試合はその後になるが、今日は予定が立てられない」と言う。梅澤さんは小さなスポーツ店の社員としては、驚くほどの高給を取っているので忙しいのは仕方がないのだろう。

僕の方は、順調に動体視力が伸び、先月梅澤さんがやった新型サーブの対策もできたので、ひょっとしたらジュースぐらいは行くかもしれないと思っていた。ただ、梅澤さんの動体視力がどこまで伸びるか分からないのが、不安だった。梅澤さんから電話があったので、気をチェックすると、驚いたことに先月とあまり変わってっていなかった。

<肥田式の違い>

梅澤さんの肥田式と僕の肥田式では、見た目は同じだが、根本的な違いがある。
肥田式は、人間が必ず死ぬという進化の流れの中で、脳が許容する範囲で体を緩めるため、肥田春充のように寝ると体が縮んでしまい、動体視力も落ちてしまう。

肥田式は他の東洋医学的治療と違って、腎の機能が上がるので、骨が緩む。骨が緩むと数カ月は元に戻らないので、蓄積効果があるが、必ず死ぬという範囲でしか蓄積効果はないと推定している。

だから、陰のものを食べたり、陰のものを着たり、陰の家に住んだりすると肥田式の効果はほとんどない。梅澤さんは、奥さんまで陽の気を発している陽好きで、写真嫌いだし、仕事と卓球でゲームなどする暇がないので肥田式に成功したが、誰もができるものではない。

天才的な武道家が、あらゆる努力をしても、肥田式に成功しないのは、強靭な体を持っているためだ。人間は、体力があるものは、陰好きで好戦的なように進化している。虚弱な人は、長生きすることが多いが、力士のように強靭な体力を持っているものは早死にする。虚弱な人は、陽好きで争い事を避けようとするが、強靭な人は陰好きで戦いを求めるため早死にしてしまうのだ。

実は、丸善スポーツのビルは陰なのだ。これが梅澤さんの能力が伸びるのを抑えているようだ。以前、ビルが陰だということに気が付いたので、僕が作ったピラミッドを販売価格の4分の1ぐらいで、社長に売ろうとしたが、社長は価値が分からなかった。ピラミッドがあれば、ビルが陽になって、全社員の体力が上がっていただろう。2年ほどして、『ピラミッドは、まだあるの』と聞かれたが、販売を中止した後だった。

僕の肥田式の場合は、寝ている間に体が縮むということがほとんどない。動体視力は、少しづつではあるが、日々上がり続けて、止まることがない。その最大の理由は、僕と梅澤さんでは進化の仕方が違うためだ。梅澤さんは、肥田式をやれば、それだけで、驚くほど動体視力が上がる。僕の場合は肥田式だけでは、わずかしか動体視力が上がらない。変えるためには、腎の治療と詰碁の練習が避けられない。腎の治療だけでは頭がかすかにしか緩まないが、詰碁をすると頭を確実に緩めることができるためだ。

僕と同じタイプの人は、ここまでしないと肥田式の効果が感じられないはずだ。この方式でできるようになれば、動体視力は日々上がって行く。実際には、僕と同じタイプの人や梅澤さんと同じタイプの人は少数派だ。多くの人は、その中間的な体質を持っている。

<もう一つの可能性>

梅澤さんの動体視力が上がっていないのは、上がらないのではなく、上げないのかも知れない。動体視力が上がると、バックハンドは、練習しなくてもうまくなるが、サーブが入らなくなる。おまけに、フォアで強打すると入らなくなる。だから、動体視力が極めて高い人は、野球やサッカー、テニスなど、大きなボールでするスポーツをするしかなくなる。大きなボールでするスポーツは全て陰のため動体視力が極めて高い、体力がある人が好む競技でもある。

梅澤さんは5桁の足し算も暗算でできて、決して計算違いをしないという、スーパー東大系で、動体視力も極めて高いが、東大系は、うまくなっても初心者と同じように基本通りやるため、動体視力を浪費してしまう。例えば、フォアハンドで打つ場合も、足をどういう順番でどういう角度で構え、テークバックはここまでするというように色々なチェックポイントがある。そういうところで、頭を使うと動体視力が低下してしまう。

東大系の場合、サーブを徹底的に練習すると強くなる。一人で徹底的に練習するので、プログラミングのサブルーチンのようなものが出来上がって、動体視力を下げないで、強力で、卓球台の端から5センチ以内というような正確なサーブができるようになる。それ以外の技術は、30歳をすぎないとサブルーチン化しないようだ。だから、梅澤さんは、サーブを1球目攻撃だと公言している。

肥田式ができるようになって、動体視力が上がるとサーブとフォアハンドが下手になることに気がついた梅澤さんは、動体視力をスーパーサーブが入るぎりぎりのところで抑える戦術を取ることにしたのかも知れない。誰も取れないスーパーサーブを5種類できれば、負けることはないと計算したのだろう。東大系の特徴は、あらゆる基本技術をマスターしているところにあり、サーブもあらゆるサーブをマスターしている。それをベースにして、スーパーサーブを5種類開発するのは簡単なはずだ。

来月は、梅澤さんのサーブが打てるかどうかが勝負の分かれ目となるかもしれないが、どういうサーブを打ってくるのか予想もできないのが現状だ。

2019/12/22