丸善の卓球場に行くと、梅澤さんが小学生の指導をしていた。「急ぎませんから」と言ったが、早々に切り上げてくれた。

突然、「全日本で優勝しました」と言う。「えっ、今年はお嬢さんの試合と重なるので、申し込まなかったはずなのに」と思っていると、丸善クラブが全日本クラブ選手権男子2部で優勝(http://www.jtta.or.jp/tournament/tabid/122/rptid/533/Default.aspx:二段目の左側の写真の一番左がメガネをかけていない梅澤さん)したという話だった。

今年は、サーティースで2年連続優勝した藤本さんや昔水谷選手がわざわざ練習のために出向いてきた橋本さんとか、強い人がいたので勝てたということだった。今は、梅澤さんが丸善のトップなので、喜びは大きかったようだ。

僕との試合前に梅澤さんは「今日は、本気でやっていいですか」と言う。先月僕が惨敗したので、手加減しようかと言う意味だ。「先月の試合で実力に大きな差がついてしまったのは分かっています。どのくらい差が付いたか知りたいので、本気でやってください」とお願いした。

ジャンケンは、僕が勝って、サービスを選んだ。正直のところ、今回の試合はオール0で負ける可能性があると思っていた。梅沢さんより動体視力が大きく上がっていれば、勝てる可能性はあるが、動態視力を大きく上げると、生活に支障が出る可能性があるので、3カ月ほど前から動体視力が上がるのを抑えている。そのため、動体視力をあげるのに、肥田式と卓球と囲碁による脳トレが基本になっている。

囲碁による脳トレについても、梅澤さんに教えているので、トレーニングメニューはほぼ同じだが、僕と梅沢さんでは体質が違う。梅澤さんの体質は、息子や肥田春充のように柔らかいタイプに入る。同じように、肥田式をやったら、梅澤さんの方が動体視力が上がるのは早いはずだ。もし、僕と同じ体質の読者がいたら、板の間で裸足で肥田式をやり、踵を思い切り床に打ち付けないと体は変化しない。そこまでしても、梅澤さんのタイプのような変化は起きない。

最初のサーブでエースを取ったとき、「これで0で負ける可能性はなくなりましたね」と思わず言ってしまった。ところが、梅澤さんのサーブをバックハンドで打ち抜くこともできたので、気が付いたら6-2で勝っていた。「あれっ、差がついてない。息子のように陰の本でも大量にもっているのかな」と思ったが、結局、逆転され7本しか取れなかった。2セット目は4本、3セット目は2本だった。

僕は、梅澤さん以外と卓球の試合をすることはないので、普通は、3セット目あたりから調子が出てくる。だから、7セットマッチをお願いしたことがあるが、5セットマッチしかやってくれない。梅澤さんは1セットも取られたくないのだ。社長にも『試合は試合をする前から始まっている』と言われているので、ルールに違反しない範囲であれば、あらゆることをする。

ところが、東京都の試合で個人優勝し、丸善クラブが優勝したので、もう僕に負けることはないと確信したようだ。いつもは、試合専用の強力なサーブを練習して、僕と対戦しているが、今回は、普通の練習試合と同じように対戦したのだ。だから、第1セットで7本取ったのは、僕の実力ではない。ひいき目に見て、最後のセットの2本が実力だ。

以前、藤本さんがサーティースで2年連続優勝したことがあった。サーティースで優勝すると、卓球専門の雑誌に載るし、ポスターまで作ってもらえる。丸善スポーツの社長は「自慢の息子です」と言っていた。この人と一度試合をしてみたいと思ったので、丸善スポーツで顔を合わせたとき、「梅澤さんから1セット取ったら、試合をお願いできないでしょうか」と聞いてみた。そうしたら、「いいですよ」と言ってもらえた。

それから、3か月後に1セット取ることができた。そうしたら、梅澤さんの顔色が変わった。僕は驚いてしまった。「全日本に出るような選手は、素人の高齢者に1セットでも取られると、ものすごくショックなのだ」と思った。そして、2セット目は手を抜いてしまった。その後、2年以上1セットも取ることができなかった。

1セット取ったので、藤本さんは、毎月1回1年間練習付きの試合をしてくれた。毎回10セットも試合をしてくれた。本当にラッキーだった。これは想像だが、僕に1セット取られた梅澤さんは、思いっきり絞められたに違いない。藤本さんが引退すれば、梅澤さんが丸善クラブを背負って立たなければならないのだから。

あるとき、丸善の卓球所に行くと、梅澤さんが試合をしていた。試合が終わってから、「今の人、うまいですね」と言ったら、「渡辺さんにやるサーブとはサーブが違いますから。3本以上は絶対に取らせません」と言ったので、やっと特別扱いされているのに気がついた。

今後、梅沢さんが気を緩めることはないだろうから、厳しい試合が続くに違いない。

2019/10/27