卓球レポート14 梅澤さんは心虚の問題を熟知していた(6)
<くじ運が良ければ2回戦>
試合が終わると、『くじ運が良ければ2回戦、3回戦は難しい』と梅澤さんは言った。そして、いきなりサーブの練習の仕方を教え始めたのだ。その理論は精緻で複雑だった。今まで聞いたことのないような理論だった。僕が『難しい』と言うと、実際にサーブを受けさせたり、サーブをやらせたりして説明した。性格が変わり、別人かと思われるほど親切になり、こまめに教えてくれた。僕の質問にもすべて答えてくれた。
今回の試合から、僕がサーブで勝負するしかないと思っていることが分かったのだろう。そして、梅澤さんも心虚が強い人はサーブで勝負するしかないと確信しているのだろう。この時点では、梅澤さんの気持ちは、ここまでしかわからなかった。梅澤さんの気持ちより、『この理論を習得するには10年はかかる』という驚きで気持ちがいっぱいになっていた。
最も衝撃的だったのは、梅澤さんのサーブの基本は、ラケットのどこにボールを当ててどこまで転がすかということでボールをコントロールすることだった。『僕には不可能かもしれない。出来たとしても10年はかかるだろう。梅澤さんは才能があったのだ。サーブにおいては間違いなく日本のトップだ』と思った。
2022/9/5