<理由を説明するしかない!>

どう考えても『理由を説明するしかない』という結論にしかならなかった。『これからも長い付き合いになるのだから』と思った。

翌日、約束の3時にお店の方にお礼に伺うと梅澤さんは待ち構えていた。お店にはお客が2,3人いたが、他にも店員がいるので、僕との話に時間を割こうとしていた。

紙袋から、捨てずに置いた無数に線が入ったラバーを取り出し、『ここまでは行ったのですが、先月梅澤さんと試合をする1週間前から動体視力が急激に落ち始めたのです』と説明しながらラバーを手渡した。

梅澤さんは無数の線を見ながら『ラバーは伸びるんだ』と独り言のように言った。『僕はインパクトの瞬間、ラケットを返すので、ボールがスポンジの上を滑るんです』と説明した。『すごい!』と梅澤さんは叫んだ。

『その線は3球目攻撃の練習でできたものです。バック側のラバーには2、3本しか線が入りませんでした』と説明した。梅澤さんは黙って聞いていた。梅澤さんが反射板を使って3球目攻撃の練習をする意味を知っていたので、『向こう側の卓球台の端に反射板を置き、返ってきたボールを打ちました。フォアに来ても、バックに来ても、ミドルに来ても、3球目攻撃ができました。全日本で優勝するのは時間の問題だと思いました』と説明した。梅澤さんは、あまりのショックのため言葉が出ないようだった。<続く>

2022/7/14