「タール系の忌避剤がイノシシに効くのは、山火事の時の臭いがするからだと言われています。」
「雄猪の平均寿命は6年でしたよね。猪が、皆、山火事を経験するほど、山火事の頻度が多いとは思えませんが」と町会長。
「人間がヘビを見てぎょっとするのと同じだと思います。」
「ヘビに噛まれたこともないのに、見ただけで、ぎょっとしますね」と町会長。
「実は、猿もヘビを見て、ぎょっとするみたいです。」
「猿が庭に来ることがあるのですか」と町会長。
「そうなんですよ。一番見晴らしがいいところに来てウンチをする猿がいたので、本物そっくりのおもちゃのヘビを置いておいたら、2度と来なくなりました。」
「もしかしたら、人間が樹上生活をしていたころの進化で、ヘビを見るとぎょっとするようになったということですか」と町会長。
「そうかもしれませんが、証明する方法はないでしょう。」
「猪がタール系の忌避剤の臭いを嗅いで、ぎょっとするのも同じ反応だということですか」と町会長。
「おっしゃる通りです。ウィキペディアに『イスラエルのベノット・ヤーコヴ橋の河岸にあるゲシャー遺跡では、ホモ・エレクトスかホモ・エルガステルが79万から69万年前に火を使っていた証拠がある』と書かれているので、この頃から、人類の祖先が原始的な焼き畑をしていた可能性があります。」
「そんな昔から人類は焼き畑をしていたのですか」と町会長。
「落雷などの自然発火による山火事の痕を見れば、雑草が極端に少なくなっていて、穀物を栽培するのに適していることに気がつくのは、容易だったと推定しています。」
「なるほど。」
「また、消火技術が発達していない古代においては、焼き畑が突風などで大きな山火事になることが頻繁にあったと推定しています。」
「そう考えれば、猪が山火事の臭いを嗅いで、ぎょっとするようになった進化が理解できますね」と町会長。
2020/1/8
