「衝撃だったのは、藤沢秀行という有名な棋士が、棋士仲間と『めくら碁』をよく打ったということでした。」

「『めくら碁』と言いますと?」と町会長。

「碁盤や碁石を使わないで、頭の中に碁盤や碁石をイメージしてやるようです。」

「相手の頭の中に碁石を置くことはできませんよね」と町会長。

「おっしゃる通りです。『十四の7』のように、打とうとする石の位置を座標で言います。」

「渡辺さんは、『めくら碁』をしたことはないのですか」と町会長。

「『めくら碁』をしたことはありません。僕には不可能です。」

「渡辺さんは、碁石がイメージできないのでしたね」と町会長。

「おっしゃる通りです。3路の碁盤ならイメージできますが、19路の碁盤は不可能です。」

「それで、渡辺さんは、『囲碁の才能は全くない』と言ったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「プロの棋士は、間違わないで最後まで、『めくら碁』ができるのですか」と町会長。

「『めくら碁』に関する情報は、藤沢秀行についてのものだけなので、プロの棋士、一般、については分からないのですが、藤沢秀行や当時の対戦相手は、終局まで打って、白地と黒地の目数を正確に数え、何目差か分かったようです。」

「途中で分からなくなって、議論になるようなことはなかったのですか」と町会長。

「分からなくなった場合、頭の中で最初から打ち直すそうです。」

「どこにどういう順で打ったか記憶しているのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。19歳11カ月で史上初の10代名人になった芝野虎丸は、将棋の藤井棋聖との対談で、『物語があるから覚えられます。初心者の対局は、失礼な言い方になりますが、意味がない打ち方をするので覚えづらいです』と言っています。」

「渡辺さんは、打った碁は記憶しているのですか」と町会長。

「物語がないためか、覚えられません。」

「なるほど。囲碁の才能は全くないのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。もしかして、普通の人は、『リンゴ』と言うと写真に撮ったようなリンゴがイメージできるのかと思って、ウェブで調べてみました。」

「『リンゴ』をカラー写真と同じようにイメージできる人がいるのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。日本人はイメージできる人とできない人がいるようです。」

「外国人は、どうなのですか」と町会長。

「欧米人は、普通、イメージできるようです。この症状は、欧米では『アファンタジア』と呼ばれています。」

「カラーでリンゴがイメージできないと、『アファンタジア』という病気なのですか」と町会長。

「日本人はアファンタジアの人が多いからか、赤いリンゴがイメージできなくても、日本では普通の人で、病気ではありません。また、日常生活に問題を起こさないので、医学的な見地からも病気とは言えないと思います。」

「なるほど。なぜ、カラー写真と同じようにイメージできる人とできない人がいるのでしょうか」と町会長。

2021/4/1