「造形大学で写真の勉強していた石井君という友達が、『その喫茶店のカウンターに「今井さん」という女の子が入っているので、暇なとき遊びに行ってやってくれない』と言ったのです。」

「なるほど。友達に言われたので、行くようになったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。お客も少なかったので、今井さんという女の子と話をすることができました。」

「なるほど。」

「あるとき、今井さんが、『高校生のとき、千葉県の女子一般のシングルスに出て、準優勝したことがある』と言ったのです。」

「僕は、多分、『千葉県の男子一般のシングルスで優勝した人と、時々、卓球をしている』と言ったのだと思います。」

「それで、今井さんと卓球の試合をすることになったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。その頃、国分寺の南口の近くに卓球場があったので、今井さんのお休みの日に、そこで試合をすることになりました。」

「結果は、どうだったのですか」と町会長。

「今井さんの卓球は筋金入りでした。」

「『筋金入り』と言いますと?」と町会長。

「試合の前に30分ほど練習したのですが、フォアハンドにしても、ツッツキにしても、ショートにしても、機械のように正確なのです。千葉県の女子一般のシングルスに出て、準優勝するには、ここまで練習するのかと思いましたね。」

「いわおちゃんより正確なのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。自分の技術が恥ずかしくなるほど、正確でした。」

「それで、勝負はどうなったのですか」と町会長。

「実は、いわおちゃんに勝っていたので、『今井さんがここまで練習して高い技術を持っているのに、僕が勝ってしまうのだろうな』と、申し訳ないような気持ちになっていました。」

「自信過剰だったのではありませんか」と町会長。

「1セット21本で、5セットの勝負をしました。」

「3セット先に取った方が勝ということですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。思った通り、僕が3セット連続先取して終わりました。」

「今井さんは、1セットも取れなかったのですか」と町会長。

「そうなんですよ。」

「それでは、いわおちゃんが、千葉県の男子一般のシングルスで優勝したことは間違いありませんね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「もしかして、千葉県は卓球が弱いのではありませんか」と町会長。

「実は、僕もそう思いました。それから数年して、英会話スクールを立ち上げたのですが、僕より少し若い栗林君というのが会員になりました。」

「その栗林君というのも卓球をやっていたのですか」と町会長。

2021/4/23