「中神先生は、英語で本が書けるのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。手が勝手に動いて、1カ月で書き上げたと言っていました。」

「手が勝手に動くというと、自動書記ということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「本になっているということは、まともな英語で書かれているということですよね」と町会長。

「おっしゃる通りです。横で話を聞いていた奥さんが、その本を勉強するためにアメリカ人の大学院生が、夏休みに1カ月ほど泊まり込みで勉強しに来たと言っていました。」

「中神先生は、語学が堪能なのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。『辞書さえあれば、どんな国の言葉で書かれたものも読める。これが本当の語学力ではないのかね』と言ったことを覚えています。」

「やはり、それも超能力なのですか」と町会長。

「本人に確かめてはいませんが、触発系の超能力だと思います。」

「外国語で書かれた文と辞書に触発されて、書いた人の意図が分かるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。家内も自動書記はできたみたいで、遺品の中に、数百ページに及ぶ哲学の論文がありました。」

「奥さんは、大学で哲学を勉強していたのですか」と町会長。

「そういう話は聞いたことがなかったので、レベルの高さにビックリしました。有名な大学教授でないと、あのレベルの論文は書けないと思います。」

「どうして、自動書記で書いたことが分かったのですか」と町会長。

「実を言うと、家内は知能指数は高かったのですが、ものを考えるということをしたことがなかったようです。」

「人間は、ものを考えないで生きることができるのですか」と町会長。

「普通はできません。家内の場合は、生活に必要な知識が、必要なときに、その場で頭の中に降りてくるので考える必要が全くなかったのだと思います。」

「そんな人間がいるのですか」と町会長。

「『2歳のときに、荷車から落ちて頭を打った』と言っていましたから、打ち所が良くて、小脳が思いっきり緩んだのではないかと推測しています。」

「奥さんが、ものを考えたことがないと言ったことがあるのですか」と町会長。

「知識が降りてくると言ったことはありますが、ものを考えたことがないと言ったことはありません。おそらく、ものを考えるということ自体分かっていなかったと推測しています。」

「それでは、奥さんがものを全く考えないことに、なぜ気がついたのですか」と町会長。

「気がついたのは、最近です。」

「気がついたのは、最近なのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。ヒントは結婚したときあたりからあったのですが、僕の小脳の経絡的な壊れ方がひどいため気がつきませんでした。」

「『The Principles of Mathematics』で、脳がやられてしまっていたのでしたね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

2021/2/2