「息子さんも、渡辺さんと同じようなアファンタジアなのですか」と町会長。

「息子は、僕と違って、赤いリンゴもイメージできます。しかし、カラー写真のように鮮明ではないと言っているので、軽度のアファンタジアということになります。」

「それでは、碁盤や碁石はイメージできるのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。しかし、10路盤くらいが限界のようです。」

「渡辺さんは、碁盤の上に置かれている碁石が、全くイメージできないのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それでは、なぜ、5手詰めとか7手詰めの詰碁を解くことができるのですか」と町会長。

「碁盤は、詰碁のソフトが表示するのでイメージする必要がないのですが、碁石がイメージできないのに詰碁が解けることは、藤沢秀行の『めくら碁』の話を読んで以来、大きな謎になっています。」

「碁盤上の石がイメージできないのに、5手とか7手先が読めるというのは不思議ですね」と町会長。

「そうなんですよ。碁盤に置かれている石が繋がっているとか、切り違っているとか、生きているとか、死んでいるというような抽象的な石の関係や配石の意味が分かるので、詰碁を考えることができるのではないかというのが、僕の最新の仮説です。」

「碁を知らない人が、碁盤に置いてある碁石を見ても、石が繋がっているとか、切り違っているとかいう抽象的な意味は理解できないですね。しかし、渡辺さんは詰碁の石の配置の抽象的な意味を理解しているということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。引力とか加速度という言葉は抽象概念で、見ることはできませんが、考えることはできます。」

「なるほど。しかし、それほど才能がないのに、なぜ、有段問題とか高段者問題が100問連続とか200問連続で解けるようになったのですか」と町会長。

「先ほど言ったように、詰碁850を最後までやり、2回目の挑戦をしたとき、1週間とか2週間考えたものは、2回目も同じように解けないことに気がつきました。」

「誤った解き方が記憶に残ってしまっていて、正しいとき方が思い出せないためでしたね」と町会長。

「おっしゃる通りです。実は、健康のために卓球場を建て、卓球マシーンを購入したとき、ホームポジションからフットワークを使って動いてフォアハンドでボールを打ち、ホームポジションに戻るという動作が100回連続でできるように練習したことがあります。」

「このときも100回連続だったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。長期間のスランプを脱出した愛ちゃんが、『卓球の練習のとき、ラリーが100本連続で入るまで練習を止めないようにしたら、勝てるようになった』と言ったことがあるのです。」

「なるほど。それで、愛ちゃんのまねをしようとしたのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それで、100回連続で入るようになったのですか」と町会長。

「愛ちゃんが上達するくらいですから、そんなに簡単にはできませんよ。」

「それで、どうしたのですか」と町会長。

「目標回数を30回にしました。」

「愛ちゃんが100回連続ということなら、渡辺さんが30回というのは、妥当な回数ですね」と町会長。

2021/4/15