「今考えると、鶴島は異常に誇り高い男の子だったのです。」

「『異常に誇り高い男の子』と言いますと?」と町会長。

「子どもの頃から知っている人だと、大学の卓球部の主将でも『いわおちゃん』なのですが、鶴島は小学生のときに会ったときも、『鶴島』でした。」

「鶴島の友達が『鶴島』と呼んでいたということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。僕は上川小学校に通い、鶴島は『川口小学校』に通っていたので、川口小学校の状況は分かっていませんが、鶴島が連れてくる友達は、皆、『鶴島』と呼んでいました。川口小学校に通っていた僕の中学校の同級生も、『鶴島』と呼んでいましたね。」

「鶴島は、小学生のころから『~ちゃん』のように子ども扱いされるのが嫌だったということですか」と町会長。
 
「おっしゃる通りです。今考えると、鶴島が『~ちゃん』のように呼ぶことを許さなかったのだと思います。」

「それが事実だとすると、確かに、異常に誇り高い子供ということになりますね」と町会長。

「おっしゃる通りです。卓球を一緒にやっているときは気がつきませんでしたが、今考えると、鶴島は運動神経が良かったので、上級生と喧嘩をしても負けることがなかったのだと思います。」

「なるほど。それで、鶴島は『自分は周りの子供とは違う』と思っていたということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。喧嘩が強かったので、周りの子供は、鶴島が何を言っても、逆らうことができなかったのだと思います。」

「そして、異常に誇りが高いために、人差し指の付け根がえぐれたようになっていたということなのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。鶴島は、試合だけでなく、ロングの練習でも、絶対に打ち負けたくなかったのだと思います。」

「なるほど。それで、指に思い切り力を入れて打ったのですね」と町会長。

「指に力を入れて打つと球威のある球は打てません。」

「それでは、なぜ、人差し指の付け根が紫色にえぐれたようになったのですか」と町会長。

「僕はミシンの椅子を振る練習をしたのですが、鶴島はラケットに重りをつけて振る練習をしていたのだと思います。」

「なるほど。」

「僕は、ミシンの椅子を振っただけではなく、手首のスナップを使って高回転の球を打ったり、ラケットを斜めに当ててサイドスピンをかけたりするなど、毎回違った打ち方をしていましたが、鶴島はいつもきっちりと返してきました。」

「鶴島は、渡辺さんに打ち負けないために、家で想像もできないような努力をしていたということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。この練習がいわおちゃんとの試合で役に立ったのです。」

2021/5/6