「動体視力が2種類あるのは、人間が生き残るのに必要な能力だったからです。狼やクマに追いかけられたとき、動的動体視力が高くなれば、生き残る可能性が高くなります。」

「確かに、動体視力が低くて、何かにつまづいたりすれば、食べられてしまうかもしれませんね。しかし、なぜ、動体視力が1種類だけ高くなるという進化をしなかったのでしょう」と町会長。

「視覚情報の処理が脳に大きな負担となるためだと思います。調べてみると、鳥類の脳細胞の数は、あんな小さな頭で哺乳類と同じくらいあります。」

「広い領域を俯瞰しながら飛ぶので、視覚情報を処理するために哺乳類と同じくらいの数の脳細胞が必要になるのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。あんな小さな頭で、驚くほど頭がいいのです。そこの斜面になっているところに野鳥が飛んできて、砂苔をグチャグチャにされたことがあります。何とか元に戻すと、翌日来て、またグチャグチャにするんですよ。最初は、砂苔の下にいるミミズを食べようとしているのだと思ったのですが、砂苔の下の土が完全に乾燥し、虫一匹いない状態でもやるんです。それで、鳥類の脳細胞の数を調べたら、哺乳類と同じくらいあったのです。」

「餌が欲しくて、砂苔をグチャグチャにしたのではないということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。仲間を連れてきて一緒にやることが多いのですが、自分の足で景色を変えられるのが面白いらしいのです。人間が絵を描くのと同じですよ。猫もグチャグチャにしたいやつが一匹います。」

「なるほど。それで、あの鳥の鳴き声を流しているのですか」と町会長。(※第1話参照)

「鳥が一番恐れるのは、猛禽類ですからね。話が脱線してしまいましたが、視覚情報の処理が脳に大きな負担となるので、普通は、静的な動体視力を使います。しかし、運動しているときは、脳が筋肉を動かすために使われるので、動体視力も使うと脳の機能が限界に達するのだと推定しています。その解決策として、通常は他の働きをしている脳の一部を一時的に動体視力として使える状態にしたのが動的動体視力なのだと思います。」

「なるほど。動的動体視力は、脳の使い方が通常とは異なるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。原始社会において人間が動的動体視力を必要とするのは、命が危険なことが多いでしょうから、生命維持に関係しない部分が、動体視力の計算に使われても不思議はないと思います。」


「その動的動体視力を上げる方法があるのですね」と町会長。

2019/10/28