「実を言うと、小学生のころから自分の脳の能力に限界を感じていたのですが、どのくらいダメかと言うのが分かったのは、我が家の庭に来る猫のグループと友達になってからです。猫は、人間は体力がなく、頭が悪いということを熟知しています。」

「確かに、猫は頭がいいみたいで、庭に来てウンチをするのだけど、何をやっても裏をかかれてしまい、どうにもならないという話を聞いたことがあります」と町会長。

「実は、陰陽が分かる猫がいます。僕が中神先生と呼んでいる陰陽の師がいますが、その先生が飼っている猫は陰陽が分かります。僕は元々、陰陽とか経絡は全く分からない人間で、否定はしませんでしたが、信じてもいませんでした。しかし、腎の治療で体が緩み、陰陽がなんとなく分かりかけて来た頃、八十二銀行に展示されていた中神先生の絵が陽の気を発していて、体に変化を与えることに気がつきました。」

「確か、御陵の入り口のあたりに住んでいる有名な画家ですよね」と町会長。

「ええ。その絵を購入したのが縁で、中神先生との交流が始まり、それまで気にかけもしなかったパワーグッズの作り方なども教えてもらうことになったのですが、初めて伺ったとき先生と話をしていると、猫が僕の膝にピョンと飛び乗ってきました。中神先生は『これ、お客様の膝に載ってはダメじゃないか』と猫に言い、『この猫は陰陽が分かるのですよ』と言って、その猫をペットショップで買った時のエピソードを話してくれました。」

「渡辺さんが陽の気を発しているので、膝の上に乗りたかったのですね。もしかして、その猫は僕より頭がいいのではありませんか」と町会長。

「その時は、猫が、人間は体力がなく、頭が悪いと思っていることに気がつかなかったのですが、我が家の庭に来る猫のグループと付きあっている間に分かるようになりました。」

「猫が集団で遊びに来るんですか」と町会長。

「ええ。雌猫を飼う人は少ないためか、雄ばかりの集団なんですが、僕が長老と呼ぶ体格のいい老猫がボス猫でした。その頃は、玄関のわきに上が平らになった欅の根っこがおいてあったので、長老はいつも根っこの上に座り、やせた黄色い猫がその下に座っていました。他の猫は、長老と黄色い猫に向き合うように地面に座っていました。長老と黄色い猫が協力し合って、他の猫を支配しているようでした。餌を上げなかったので推定ですが、近所の人がくれる餌は、長老と黄色い猫が最初に食べて、残りを他の猫が食べていたのだと思います。」

「猫にも社会性があるんですね」と町会長。

「そうなんですよ。ちょっと驚きました。もう一つ驚いたのは、長老は他の場所ですれ違うと、必ずニャーと鳴いて挨拶をすることでした。」

「うちの猫は、外で会うと他人のふりをするのですが」と町会長。

「それは、町会長が餌をあげているので、メッシーと思われているからです。」

「メッシーですか?」と町会長。

2019/11/1