「先ほど話したように3億5千万年くらい前に恒温性の爬虫類が現れますが、このタイプの爬虫類には、足に怪我をしたとき、左右のバランスを取るための経絡があったのではないかと想像しています。左右のバランスが取れると、怪我をしていない足も機能低下しますが、運動すれば機能が上がるので、この方が生き残りには有利だったと考えています。この時点での経絡は、早く死ぬためのものではなく、生き延びるためのものだったはずです。」

「確かに、現在の人間のように複雑な経絡を持った哺乳類が突然現れたと考えるより、哺乳類が現れる前に、単純な経絡を持った哺乳類の祖先的な生物がいたという仮説は理解しやすいですね」と町会長は進化論的説明に好意的な反応を示した。

「哺乳類が誕生したのは、確か・・・」と筆者が言いかけると、町会長は「2億5000万年前です」と言った。アホポンと思われたいのだけれど、言いたいことは言っちゃうというのが町会長の基本姿勢みたいだ。町会長の専門は電気なので、畑違いの生物の進化に詳しいのは、よほど興味があるからに違いないと思った。

「哺乳類は最初から不老不死に近い存在だったと推定しています。しかしながら現在の哺乳類と比べると、免疫力が弱く、数が増えるとインフルエンザウイルスで壊滅状態になったと推定しています。インフルエンザウイルスは、元々、カモメやサギなどの水鳥の腸に感染するウイルスで、人間の大腸菌のように宿主には問題を起こしません。ところが、このウイルスが水鳥以外の鳥や哺乳類などに感染し、突然変異を起こして、水鳥以外の鳥の間や哺乳類の間で感染性を持つようになると、鳥が大量に死んだり、哺乳類が大量に死んだりします」と説明しかけると、町会長は「水鳥類の祖先となる恐竜はインフルエンザウイルスに感染していたとお考えなのですね」とポイントを鋭く突いてきた。

「おっしゃる通りです。鳥の卵を食べたり、恐竜を狩りしていた当時の人間は、免疫力が進化していなかったので、感染しやすかったと推定しています。人間の数が多くなると、インフルエンザウイルスに感染しやすいタイプの人間が増えるのは避けられないでしょうから、人間の数が増えれば増えるほどインフルエンザウイルスが人間間で感染するように突然変異する可能性が高くなります。感染すると1個のウイルスが1日で百万個に増殖すると言われています。これが突然変異を起こして人間間で感染するようになる最大の原因です。」

「人間が突然変異を起こして、ウイルスに感染しなくなるより、水鳥のインフルエンザウイルスが突然変異を起こして人間間で感染するようになる可能性は百万倍も高いということは分かりますが、それで人間が自ら死ぬようになるというのは考えにくいのですが」と町会長は反論に転じた。

2019/9/15