「陰陽がお分かりになるのですか」と聞くと、「陰陽は分かりません」と断言した。第一話で書いたように、町会長は着ているものから陰陽が分かる天才と思われるのだが、70歳を超える人の服装としては、違和感が感じられる。シャツを裾出ししているのだ。どうも町会長は、筆者にアホポンと思われたくて、ここまでしているようなのだ。ここまでやるのであれば、陰陽が分からない人として話をするしかないのだろうが、「人間は、本質的には、不老不死であり、自ら全体のために死んでいくように進化している」と言ったら、どういう反応をするのだろうかと好奇心が頭をもたげた。

「陰陽は全てのものにあります。見たり、触れたり、食べたりすると、体が縮み、内臓が縮んで、機能低下し、体力や知力が落ちるものが陰で、体が緩み、内臓が緩んで機能が上がり、体力や知力が上がるものが陽です。昔は、陽のものが多かったのですが、今はスーパーを見ても、ウェブを見ても、陰の物しかありません。商人は、陰の物を売りたいわけではないのですが、買う人が陰の物しか買わないので、陽のものを売らなくなってしまったのです。皆が死のうとしているのです」と言うと、「そうかもしれませんね」という答えが返ってきた。

この答えには驚いた。町会長は陰の物によって人が死ぬことを理解しているのだ。筆者の息子でさえ、完全には理解できないことが、町会長は、人が陰の物によって死ぬことと、人間が全体のためにできるだけ早く死のうとしていることさえもを理解しているようなのだ。じゃあ、経絡も分かっているのだろうか?鍼灸師でさえ理解していない、経絡の本質的な意味を分かっているのだろうか?筆者は、一日も休むことなく、自分の体を使って30年近く経絡治療の人体実験をし、やっと理解できたというのに、他にもこの問題を理解している人間がいるのだろうか?実際、120歳を超えた日本人は誰一人いない。経絡の連鎖については、なんとなく分かっているだけなのかもしれない。いろんな疑問が頭をよぎったが、とにかく、陰陽が分からないものとして話すしかないのだ。

2019/8/8