「碁会所の先生と4段のプロでは、教え方が違いますか」と町会長。

「僕が碁を打った人の中で、碁について教えようとしたのは天野先生だけです。」

「天野先生は碁の基本的なルールを教えてくれただけですよね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それでは、碁会所の先生も4段のプロも、単に碁の相手をしてくれただけなのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。どちらの先生にも5目置いて打ったのですが、碁会所の先生と4段のプロでは碁が違いました。」

「碁が違うと言いますと?」

「その碁会所には5段の人が何人もいたのですが、皆、7目とか8目置いて打っていました。」

「7目とか8目置くと言いますと?」と町会長。

「僕の場合は教授料を払っていたので、いつもハンディキャップとして5目置いて打っていましたが、他の人は、連続して負けると置く石の数が増えていきます。」

「それで、7目とか8目、ハンディキャップとして置くことになってしまうのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。小学校のときの同級生のお兄さんが、その碁会所に通っていたのですが、『最近一番強くなったのは先生じゃないか』と言っていました。」

「碁会所の先生は何歳ぐらいだったのですか」と町会長。

「70歳ぐらいだったと思います。」

「70歳ぐらいでも碁は強くなるのですか」と町会長。

「5目で打っていた人達が7目とか8目置く羽目になったのですから、間違いなく強くなっています。」

「碁会所の先生は驚くほど強かったということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。しかし、4段のプロの碁は、全く違うタイプの強さでした。」

「同じように5目置いて打ったのですが、接近戦になると僕の打った石の形がグズグズになってしまうのです。」

「石の形がグズグズになってしまうと言いますと?」

「石の形には強いとか弱いとか、厚いとか薄いとか、重いとか軽いと言った感覚的なものがあるのですが、4段のプロと打つと、必ず石が崩れたような形になってしまうのです。」

「それがプロの碁の特徴なのですか」と町会長。

「これは、このプロの特殊な才能だと思います。数カ月して詰碁で有名な曲9段と、その2か月後に武宮正樹本因坊と打つことになるのですが、石の形がグズグズになるという感覚はありませんでした。しかし、武宮正樹本因坊の碁は、カミソリのような鋭い、才能にあふれた碁で、衝撃を受けました。」

「なぜ有名なプロと打つことになったのですか」と町会長。

2020/6/17