「おっしゃる通りです。北大西洋で海水の沈み込む速度が遅くなると、寒冷化が起こるようです。ご存知のように、水を下から温めると、温められた水が軽くなって浮き上がることで対流が起こりますが・・・」

「海水は、上から温められるので、対流が起こらないのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それで、深海の温度は低いのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。しかし、冷たい風で海面が冷却されたり、海氷ができるときに塩分が放出されたりして、海水の密度が高くなると、重くなって、海水が沈み込む現象が起きて、対流が起こることがあります。」

「熱塩循環は、その沈み込みで起こるということでしたね」と町会長。

「おっしゃる通りです。熱塩循環は、海水の沈み込みで起こるので、海水が沈み込むスピードが遅くなると、熱塩循環のスピードが連動して遅くなってしまうということのようです。」

「それは不思議ですね」と町会長。

「そうなんですよ。沈み込んだ密度の高い海水の塊が、拡散しないで、まとまったまま海流となって循環するというのは、とても不思議です。」

「しかし、海水が全く拡散しないということは考えられませんよね」と町会長。

「おっしゃる通りです。砂糖より、塩の方が拡散スピードが速いことは知られています。」

「しかし、実際に循環しているので、1200年経っても拡散してしまわないということは明らかですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。水の比熱は高いので、温度が拡散しにくいのは確かです。しかし、温度が拡散するのを止めることはできないでしょうから、塩分の拡散スピードが遅いのだと思います。」

「北極海で海水が沈み込んだ場合、中深層の海水の温度が低いから、熱の拡散も起こらないのではないでしょうか」と町会長。

「おっしゃる通りです。沈み込む海水とその周りの海水の温度差がなければ、熱の拡散は、起こらないはずです。温度差が少なければ、拡散スピードは遅いはずです。」

「温度差が少なければ、熱の拡散スピードは遅いのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。フーリエの法則というのがあるのですが、大雑把に言うと、物体中を流れる熱量は温度差に比例します。」

「なるほど。熱塩循環が深海の温度差がないところを流れていれば、熱の拡散は起こらないということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「塩分の拡散スピードが遅いというのは間違いないのですか」と町会長。

「京都大学の数理解析研究所講究録に『海洋と室内実験に見る二重拡散対流』という論文が1999年に掲載されていますが、その論文によると『海水では熱の拡散に比べて塩分の拡散は100倍も遅い』と書かれています。」

「なるほど。それで、塩分の拡散スピードが極めて遅いことが、海水の沈み込みのスピードと熱塩循環のスピードに連動性がある理由だとお考えなのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。塩分の拡散スピードは、海水温が低くなれば遅くなるので、熱塩循環が深海を流れている可能性が高いと推定しています。」

「なるほど。」

2020/8/5