「同時通訳が奇妙な英語を話すようでは、日本の英会話スクールに通っても、まともな英語は話せるようにならないということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。だから日本の英会話スクールで働いているアメリカ人やイギリス人は、仕事をする気が無くなってしまうのです。」

「それで、渡辺さんのスクールで働きたいという優秀な人がいたのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「僕は、フランスの家庭料理を出す、パブ風のレストランに行くことが多かったのですが、そこで英会話を日本語の大学で教えているイギリス人の教授と、時折、話すことがありました。」

「その教授も、英会話を教えるのに嫌気がさしていたのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。『大学で英会話を教えるのは嫌いだ。日本人も大嫌いだ。日本人は、うどんを食べるときズルズルと音をたてるではないか』と会うたびに言っていました。」

「長年、日本で英会話を教えると、そうなってしまうのですか」と町会長。

「そうなると、普通は国に帰ってしまうのですが、その教授は帰らなかったのです。その教授は、会うたびに同じことを言うので、『そんなに日本が嫌いなら、なぜ、日本で働くのだ』と聞いたのです。」

「そうしたら、“I’m neurotic”と言いましたね。」

「“I’m neurotic”と言いますと?」と町会長。

「『僕は精神が少しおかしいんだ』くらいのニュアンスです。」

「なるほど。日本で長期間英会話を教えたアメリカ人やイギリス人は、皆、仕事が嫌いになってしまうのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。それで、先ほど話したように、アメリカ英語とイギリス英語の違いについて書ける人をジャパンタイムズで募集したときにも、日本の大学で教えている英会話講師数人を含む20人くらいの人が応募してきたのです。」

「大学で教えるような優秀な人が応募してきたのですね」と町会長。

「そうなんですよ。ところが、『A Comprehensive Grammar of the English Language』を使う仕事だと分かると、大学で教えていた人は、全員、恐れをなして逃げてしまいました。」

「それでは、残った人はいなかったのですか」と町会長。

「二人いました。」

「大学で教えていた人は、逃げてしまったのに、二人もいたのですか」と町会長。

「一人は、アメリカで大企業のパンフレットを作る会社をやっていたギャリー・クラークで、もう一人は、東京大学の大学院で勉強していたアメリカ人の女性でした。」

「東京大学の大学院で勉強していた女性は、頭がよさそうですが、パンフレットを作る会社をやっていた人に『A Comprehensive Grammar of the English Language』が理解できるのですか」と町会長。

「アメリカ人は、日本人と違い、独立志向が強くて、能力の高い人は自分の会社を作って、やりたいようにやろうとするのです。」

「それでは、会社員になる人は、能力が低くて、自分で会社を作ることができない人と思われているということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

2020/11/5