「『異端の統計学』に、『1983年にNASAの契約業者テレダイン・エネルギー・システムが、計1902回のロケットモーター発射で32件の失敗が確認されたという事前の経験に基づいてベイズ解析を行い、主観的な確率と運用経験からしてロケットブースターが故障する確率を35分の1と見積もった・・・当時NASAはブースターが故障する確率を10万分の1としていたが・・・けっきょく、チャレンジャーは25回目になる1986年1月28日の打ち上げで爆発し、7名の乗組員は全員死亡』という記述があります。」

「『主観的な確率』と言いますと?」と町会長。

「エニグマの設定の例でもそうなんですが、最初は、エニグマの設定がどうなっているかは分かっていない状態です。ですから、最初の仮説に関する確率は、とりあえず、過去に入手した暗号文などから主観的に決めるしかないのです。」

「それでは、テレダイン・エネルギー・システムが勝手に決めた確率ということなのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「勝手に決めた確率には、客観的な正しさがないのではありませんか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それでは、信用できないという人が多いのではありませんか」と町会長。

「おっしゃる通りです。そのため第二次世界大戦が始まるまで、否定的な学者が多かったのです。」

「なるほど。それでも、コンピュターが普及した1980年代になると、ラプラスが統計学に応用した理論を使う人が出てくるのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。『異端の統計学』に、『1980年代に入ると、公衆衛生や社会学や疫学や画像復元などの分野でそれまで難解とされていた問題に取り組む何人かの民間研究者たちが、コンピュータでベイズの手法を使ってみた。最初の試みのきっかけとなったのは、ディーゼルエンジンの排気が大気の質やがんに及ぼす影響を巡る大論争だった』という記述があります。」

「なるほど」と町会長。

「実は、『異端の統計学』によると、2008年11月の大統領選挙の予測に、世論調査のデーターや政治に関するデーターを集積して分析するネット・シルバーというサイトが、階層ベイズモデルを使って、49州の勝者を的中させるという前代未聞の記録を達成しています。」

「大統領選挙の予測で、前代未聞の記録を達成しているのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。それで、トランプ大統領がツイッターでつぶやくごとに、googleのビッグデーターを解析すれば、州ごとの正確な投票予測ができると推定していました。」

「2008年11月の大統領選挙の予測の結果を考えると、米国で最も進んだコンピューターを使えば、正確な投票予測ができると思いますよね」と町会長。

「おっしゃる通りです。77歳のバイデン元副大統領が、トランプ大統領の対立候補になったとき、『これは、米国を支配するユダヤ系が仕組んだ出来レースだ』と直感しましたね。」

「『出来レース』と言いますと?」と町会長。

2020/11/20