「おっしゃる通り、免疫力が進化しても、人間が早く死ぬようになるということはありません。実は、人間は、相反する二つの方向に進化しているのです。」

「長生きする方向と早く死ぬ方向にですか。なぜ、そんな理屈に合わないことが進化で生じたとお考えなんでしょうか」と町会長。

「簡単に言うと、500万歳の人間はいません。人間は個として生き残ったのではなく、種として生き残ったのです。」と説明しかけると、

「なるほど、種としては長生きする方向に、個としては速く死ぬ方向に進化したということですか」と町会長。

「その辺が分かりにくいところなんですが、ポイントは先ほど説明したように、人間の数が増えると、インフルエンザウイルスの突然変異で人間間で感染するウイルスが生じ、絶滅に近い状態になるということです。その結果生き残った人間は、免疫力が進化していたということになります。しかし、小人数が生き残ったとしても、厳しい自然の中で、全員が死ぬというケースも多かったと想像しています。」

町会長は、黙って、続きを聞こうとしていた。

「発見された人類の化石が多くなったのと化石のDNAを分析できるようになったことで、人類の系統樹が詳細にあらわされるようになっています。系統樹を見ると、実に多くの人類が絶滅していることに気がつきます。化石が発見されない人類を含めれば、絶滅した人類の数は想像できないほど多かったと思われます。この絶滅を免れたのは、出産する子供の数が少なく、寿命も短いために、人口があまり増えないタイプの種族だったと推定しています。経絡が早く死ぬ方向に進化したのは、寿命が短い方が種族としては、生き残りやすかったためです。」

「なるほど。それでは、なぜ免疫は進化したのでしょうか。」と町会長。

「免疫が進化しなければ、絶滅した他の生物と同じように人類も絶滅しています。もう一つの理由は、人類が、ライオンなどとは異なり、社会生活を営む種族として生き残っているためです。種族の中だけで言えば、強くて、長生きできるタイプの人が子孫を残す可能性が高いからです。」

「なるほど。強くて、長生きできる者が子孫を残すと、その種族の人数は次第に増え、再び、絶滅を繰り返すことになるわけですね。」

「おっしゃる通りです。その結果、体力もなく、頭の悪い小人数のグループしか形成できない種族が生き残るということになります。」

「なるほど、『種としては長生きする』というのは、『個々の人間が死んでも、種として生き残る』という意味だったんですね。それじゃあ、今生き残っている人類は、体力もなく、頭も悪いということになりますが」と町会長。

2019/9/16