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始めに

英文を書かなければならない人の多くは、自分は完全な英語が書けないが、東大の英文科を出たり、英検1級を持っていたり、通訳をするような人は完全な英文が書けるという幻想の世界にいる。また、その幻想を利用して、本を出したり、語学学校を経営したりする人がいるため、誤った英語学習をするという罠に陥ってしまう人が少なくない。このサイトは、これが幻想であることを分かりやすく説明するとともに、国際競争に打ち勝たなければならない日本の英語教育はどのようにあるべきかという議論に、英作文の教育なくして日本の英語教育はないという観点から、一石を投じようとするものである。

5月1日に公開予定の英作文.netは、英語の受動的な読む能力と聞く能力だけでなく、能動的な書く能力と話す能力を必要とする人のために開発したもので、(株)渡辺米会話研究所が30年以上に渡って開発してきた英作文と英会話の教材の中から厳選された15の教材がPCや携帯で学習できるようになっている。
学習コースは、中学で学習する文型の習得から始まり、英文メールや契約書、推薦状が正しい英語で書けるように組み立てられている。最初から順番に学習していくのが最良の方法だが、お急ぎの方は、中学の英語の教科書に出てくるレベルの文型が、英作文で使えるかどうかを問う基礎能力診断テストに合格すれば、どのコースでも自由に選択できるようになっている。

それぞれのコースの後に習熟度を診断するための検定テストが用意されていて、例えば、中学の英語の教科書に出てくるレベルの文型をマスターすると7級が授与される。仕事で英文を書かなければならない人に目標としていただきたいのは、聞きたいことを正確に聞くという上級レベルの英会話能力が要求される、英作文士である。この資格の受験は有料の予定で、英文メールや契約書、推薦状をウェブ辞書やgoogle USAを使いながら書き、アメリカ人の助言を得て、書き直したものが検定される。

1.自動英作文学習サイト

「読めないものは聞こえない。書けないものは話せない。」という理念に基づいて、 ETS(English Training School)という英会話スクールを30年以上に渡って経営し、その集大成として3年ほど前に自動英作文学習サイトの開発に着手した。昭和56年に株式会社渡辺米会話研究所を設立する以前から研究して来たテーマなので、基本的なプログラムは半年もかからず完成し、特許も申請した。コンテンツは30年近く英作文の指導をしてきたため、5000問を超える問題が既にあり、当社が作成した「英語で英語を学ぶための英会話」や「旅行会話」、「ビジネス英会話」などの英会話教材も英作文の教材として使えるように編集し直した。「毎日ウイークリー」にコラムを持つETSの講師、Young講師の校閲も終了し、さらに、やさしい英文メールやビジネスメール、TOEFLエッセイ、国立大学受験のための英作文、留学のための英作文などの作成を開始した。ところが順風満帆と思えたこのプロジェクトが、英作文用の文法を作る段階で突然暗礁に乗り上げてしまった。

2.A COMPREHENSIVE GRAMMAR OF THE ENGLISH LANGUAGE

日本人が最も必要とするアメリカ英語を基にしたシンプルな文法を、 Longmanの「A COMPREHENSIVE GRAMMAR OF THE ENGLISH LANGUAGE」に基づいて作るためにアメリカ人のライターを募集したところ、数名の大学教授を含む約60名の応募があった。しかし「A COMPREHENSIVE GRAMMAR OF THE ENGLISH LANGUAGE に書かれているアメリカ英語に関する記述の誤りをレポートするのに何時間かかるか」という課題を出したところ、東大の大学院で勉強していた女性とソニーの英語マニュアルを作ったことがある男性しか残らなかった。「A COMPREHENSIVE GRAMMAR OF THE ENGLISH LANGUAGE」は、アメリカの英文科の教授が文法問題で分からなくなると最後に調べる本で、極めて難解なため、この本の名前を聞いただけで、ほとんどの方が恐れをなしたものと思われる。残った二人に、何時間でできるか見積もりをお願いしたところ明確な回答が返って来たため、この二人を雇用し、早速作業を開始してもらった。

3.英作文用のコンパクトな文法

英作文に必要な文法は、読むための文法と異なり、自分が書くのに必要なだけのコンパクトなものがベストである。また、文法事項を策定するには、アメリカ人より、英作文の経験がある日本人の方が向いている。大学の英文法の先生は専門分野は詳しくても、こういう特殊な分野を研究している方は極めて少ないと思われたので、若くて柔軟なブレインを求めて、英検1級を持っている人を募集してみた。すると慶応大学の1年生で英検1級を持っている男子学生が応募してきた。受験勉強が終わったばかりなので、文法事項も頭の中に体系的に入っていると思い、早速、英作文用のコンパクトな文法を作成するための文法事項の策定をお願いした。

4.英検1級を持っていてもまともな英文が書けない

2ヶ月後に英語で概略を書いたものを提出させ、アメリカ人の職員に読ませたところ、「英文法について書いてあることは分かるが、それ以上のことについては理解できない」という驚くべきコメントが返ってきた。数日後、慶応大学のイギリス人の先生に校正したもらったものを持ってきたので、読んでみると、英文はまともな英文になっていたが、論理構成が幼稚なため、使い物にならなかった。彼のおかげで、「10,000語を超えるボキャブラリーのある人が、正しい英文法に基づいて、言いたいことを英語で書くと、直訳的英文になり、アメリカ人にはは理解できないこと」が判明した。また、「ネイティブスピーカーのチェックを受けても、英語の論文やレポートを書き方を知らないため、アメリカ人が感心するようなものにはならない」ことも判明した。

上記のような問題が英検にあると感じている人は少なくないと思われるが、TOEICにも同様の問題があることを知っている人は少ない。TOEICの問題を作っているアメリカの ETS(当社の英会話スクールと同じ名前だが関係はない)という会社が受験用の問題を作成する会社であるのに、そこに日本人が依頼して、英会話の問題を作らせたことが、英検と同様の問題を起こす原因の一つになっている。大学で使う教科書を理解できる能力があるかどうかという観点から問題を作ってきた会社なので、5,000語を超える英単語を暗記しないと高得点が取れないような問題を作成する。そのため英検と同様に、TOEICで高得点を取っても、直訳的英会話は避けられない。

TOEICが日本人の英会話力を判断するためのテストとして適切とは言い難いことは、大学を出たアメリカ人で500点くらいしか取れない人がいるにもかかわらず、英語がまともに聞こえない生徒がリスニングの問題で高得点をとるケースがあることからも明らかである。英会話力のテストであるなら、日常会話が完全に話せる高校卒のアメリカ人でも満点が取れるようなテストでなければならないし、英語がまともに聞こえない日本人がリスニングのテストで高得点を取るようであってはならない。

ところが、TOEICのリスニングの問題で満点近い点を取ったのに、英語がよく聞こえないと言って、当社の経営するETSに入会した人がいる。その方は、 TOEICで高得点を取ったため、自分が勉強に通っていた大阪にあるジオスでTOEICの講師までさせられていた。八王子に引っ越してきたとき、八王子のジオスに行ったが、TOEICの得点が高すぎたため、入学を拒否され、近くにあった当社の英会話スクールに立ち寄ったとのことだった。5,000語前後の語彙はあったが、ヒアリングの能力をチェックすると、初級レベルだった。レベルチェックをした後、「英語が聞こえませんね」というと、「TOEICのリスニングでは満点だったんですがね」と捨て台詞を残して帰って行った。「もう来ないな」と思っていたら、2週間後に「入会したい」とやってきた。

英会話では、能力が高いにもかかわらず、この方のように自分でどんなに勉強しても、英語が聞こえるようにならないという人がいる。このタイプの人は、理数系の人に多く、短期記憶の処理の仕方が普通の人と違っているので、ヒアリング能力の向上には、特殊な訓練を必要とする。 ETSでの授業の仕方や家庭での学習法、ある程度聞こえるようになるまでに1年はかかることなど説明したところ、入会することになった。2年ほど経った頃、「僕は商社マンをしているのですが、最近取引先の外国人から、『本当に英語がうまくなった』と言われた」と報告があった。この話をETSの生徒にすると、「僕も英語がよく聞こえないのですが、TOEICでは高得点が取れた」と言う人が何人もいた。大学や高校の入試の問題を作る会社には、外国人の英会話能力を測定する研究やノウハウはないと、このとき確信した。

TOEICで満点近い点を取った人は、アメリカの大学で使うような本は読めることが保証されたと考えていいかもしれない。しかし、アメリカ人の話す英語が理解でき、アメリカ人に伝えたいことが伝えられる英語力が保証されたと考えるのは危険である。英検やTOEICなどの資格テストが、皮肉なことに、日本人がまともな英文を書けない原因となっているのである。

5.東大の医学部を出ていてもまともな英文は書けない

考えてみると、数年前同様の事例に出くわしていた。ETSで東大の医学部を出たお医者さんが同僚の方と一緒に英会話の勉強をしていた。僕とは気が合い毎年一緒にスキーに行く仲だったこともあって、ある時「先生、Natureに出す論文を書いているのですが、時間がないのでコンピューターをちょっとお借りできないでしょうか」と言われたことがあった。「駿台予備校に行っていたとき、1番以外取ったことがない」と言われるだけあって、医学論文を書くのに、辞書は一切使わなかった。「先生、スペルチェックがかけられますが」と言うと、「僕はタイプミスをしたことがないので、スペルチェックはしません」という返事が返ってきた。「さすがは東大医学部」と感心してしまった。それから2~3ヶ月ほど経ったとき、「先生、あの論文は返ってきてしまいました。『名誉のために書き直して下さい』と書いてありました」と言われた。

この友人は、英文法は完全にマスターし、20,000語を超えるボキャブラリーを持っていると思われる。その結果、自分の言いたいことが直訳できたので、Natureの編集者が「ドクターとしての名誉を汚すような英語」と感じるような英文を書いてしまったのである。

この友人を教えていたアメリカ人は、その後日本の大学の講師をし、英会話に関する論文の引用が多かったこともあって、数年で教授にまでなっている。今考えてみると、僕の友人のすごさは、彼に論文の校正を頼まなかったことである。「英語の読み書きに関する限り、日本人で僕よりできる人はいない」という自負とその裏付けがない限り、ネイティブスピーカーに校正を頼まないで、Natureに論文を提出するなどということは考えられない。

6.同時通訳ができても話す英語は「strange English」

10年以上前のことになるが、もう一例同様のケースについて話を聞く機会があった。当社で働きたいとインタビューに来たアメリカ人の方から、「先日同時通訳で有名なM先生に会った」と言う話を聞いた。M先生は日本で教育を受けて、同時通訳者になり、英会話の本を出すだけでなく、上級者向けの英会話スクールも経営していたので、個人的に大変興味があり、「どのような英語を話すのですか」と聞いてみた。そのとき、このアメリカ人がどのように言ったか、細かなことについては記憶が定かではないが「strange English」と言ったのが、妙に記憶に残っている。

それから数年して、中年の男性がETSに見学に来た。後で分かったことだが、英会話の看板があったので暇つぶしに来たようである。教材や教授法を説明する前に、基礎能力の分析テストをしてみると上級レベルに達していたので、「上級レベルです。英会話は、どうやって勉強したのですか。」とお伺いした。「英和辞典を読むのが趣味で、英和辞典を丸ごと一冊暗記している。海外で長年働いていたがコミュニケーションで困ったことは一度もありません」という回答が返ってきた。そのとき、「現在、M先生の経営する上級者向けの英会話学校に通っている」という話が出てきたので、「M先生は strange Englishを話す」とアメリカ人が言ったことを話すと「確かに、僕の通っている学校にはM先生が書いた教材はありませんね」という回答が返ってきた。書けば素人でも判断可能な証拠が残ってしまうという意味だと判断した。

僕が書いた英文や教材を見せたところ、お世辞かもしれないが「流れるような英文ですね」と言われた。「年齢から考えて、うちで勉強しても、急に英語がうまくなるということはありません」と言ったが、「是非ここで勉強させてください」と言われ、入会していただくことになった。

7.アメリカ人と結婚してもまともな英文は書けない

自動英作文学習サイトの開発に着手してまもなく、アメリカの短大を4年かけて卒業し、アメリカ人と結婚して、幼稚園に行く子供のいる28歳の女性が入社した。彼女は英検2級を持っていたので、ボキャブラリーは3000語前後、基礎文法はおおむね分かっていると思われた。普通、ETSに入会を希望する方で、「英検2級を持っている」と言った場合、「英語が話せない」という判断を下すが、彼女の場合、アメリカの短大を4年かかって卒業し、アメリカ人と結婚していることから、日常会話には問題がないという判断を下した。採用に踏み切るポイントになったのは、学生時代日記を付けていたことだった。

彼女には、仮想の日記を英語で書いてもらった。彼女が書いた日記を「毎日ウイークリー」にコラムを持つETSの講師、Young講師にチェックしてもらうと、1行ごとに間違いがあった。Young講師が直した英文は、彼女が意図したものと違う場合が少なからずあり、さらにYoung講師の英文を彼女が訂正し、その英文を Young講師が訂正するという作業を行わなければならなかった。彼女も、アメリカに留学すれば、まともな英語が話せて書けるという幻想と罠に陥った一人と言えるかもしれない。

Young講師が繰り返し指導しただけあって、この仮想日記はアメリカ人の一流のライターが書いたようなできばえになったので、「エリカの日記」という題名で、自動英作文学習サイトに収録することにした。英会話スクールで「日常会話」と言うと、団体で海外旅行に行けるレベルの会話力を指すが、本当の日常会話を勉強したい人、日本語で日常話しているような事柄を英語で話したい人は、「エリカの日記」をお勧めします。

8.英会話は間違った英語を書くようになる温床

日本人で英語を流暢に話す人は、二つのタイプに分かれる。「アメリカ人やイギリス人さえも、完璧な英語を話すと錯覚することあるが、言いたいことが言えない、相づち英語を話す」タイプと、「直訳的な、 strange Englishを話す」タイプである。前者は英作が苦手なタイプであり、後者は話しながら英作ができるタイプである。

英作文を得意とする後者のタイプが英会話を長期に続けると、間違った英語を何の違和感もなく書くようになったり、間違った英語を平気で後輩に教えるようになったりする。信じられないような話だが、ETSでYoung講師に校正してもらった論文を先輩の大学教授や企業の研究所の先輩に見せたら、間違った英文に訂正し直されたという笑えない話が実際に起きている。高校で英語の成績が良かった人は、英会話を始める前に正しい英作文の仕方を学習しないと、この罠に陥ってしまう。

前者のタイプも少なくない。例えば、「アメリカ人と結婚するので英会話を勉強したい」という女性がETSに来たことがある。「アメリカ人と結婚する」というだけあって、実に流暢に話す。本人に英会話を勉強したい理由を聞くと、「相づち英語はできるが言いたいことが言えない、意見が合わないとき、議論ができない」と言う。入会前に行った英作文のテストが好印象だったようで、入会し、徹底的に英作文の勉強を行うことになった。

9.英作文を体系的に教える学校がない

ここまで読まれると、英文のメールを書かなければならない方やこれから英会話を始めようとする方は、英作文の勉強をしなければならないことが理解できたはずである。ところが、当社のETSスクールのように英作文を体系的に教えている学校は極めて少ない。ウェブを探しても、大学受験用の英作文の添削以外はほとんど見あたらない。大学で外人講師がテーマを出して英作文をさせるところがあるが、直してもらった英文が自分の意図と違ってもそのままになるだろうし、年に数回程度の英作文をしても、焼け石に水でもある。英文メールの書き方や英会話のための英作文を教えるところは皆無である。

教える学校がないのは、英作文を教えるのが極めて難しいためだ。英作文の答えは数学と違い一つではない。日本人の先生が正しい答えを暗記しておいて教えることはできない。アメリカ人の先生も出題された日本語のニュアンスまで分かる人は滅多にいない。要するに英作文を教えることができる先生を確保できないため、英作文を体系的に教える学校がないのである。

このような状況と、大企業は言うに及ばず、中小企業でさえ海外との取引きが必要な日本の現状とを考えると、自動英作文学習サイト構築は、日本人が最も必要としているものの一つになると自負している。

10.中学で習う英語の構文:Natureに挑戦してみました!

日本人でまともな英作文ができる人を見つけることができないことは、必要な英作文用文法が作れる人を見つけるのが極めて難しいことを意味していた。英検1級を持っていた慶応大学1年のK君が全く使い物にならないことが分かってから1週間ほど悩んだ後、作れる人がいるとすれば、僕しかいないという結論に達した。以下その理由である。

(1)20年ほど前、都内で使われている中学校の英語の教科書を集め、使われている英文の文型を分析し、小学生でもできるように体系的な英作文の教材を作成した。

(2)その文型を使って20種類を超える英会話教材を書き、当社のアメリカ人講師に校正してもらったが、日本語で書いたものを事務員に訂正される程度の間違いしか指摘されなかった。

(3)ソニーの英文マニュアルを作ったことがある天才Clark先生を雇用するにあたり、アメリカ英語の文法についてメールで激論を交わしたが、Clark先生は僕と初めて会ったとき、最敬礼をし、帰り際に「僕が完璧な英語を話す」と思っていたとコメントした。要するに、僕は完全な英語は話せないが、完全な英語が書けるとコメントし、その驚きを敬礼で示したのである。書く英語は、辞書で調べながら書けるが、話す英語は辞書で調べながら話すことができないため、どうしても間違いをしてしまう。しかし、現在のような英語を話すようになってから、初めて会う外国人の態度が一変した。フレンドリーだったのが突然よそよそしく、あるいは、うやうやしくなったのである。ホテルのボーイでさえ態度が変わった。英語を話す民族は、話す英語で相手の階級を判断するためと思われる。通じるだけのブロークンイングリッシュを話していたときは、まともな教育を受けていない人と思われていたのだろう。

※天才Clark先生を雇用するにあたり、アメリカ英語の文法について激論を交わしたメールは、「公開して良い」という許可をいただいたので、別のページで公開中。英文のスタイルが分かるレベルの語学力がある方は、彼のメールを読んだだけで、なぜ僕が「天才Clark先生」と呼ぶのか分かるはずである。
※ Clark先生の頭に天才を付けたもう一つの理由は、「A COMPREHENSIVE GRAMMAR OF THE ENGLISH LANGUAGE に書かれているアメリカ英語に関する記述の誤りをレポートするのに何時間かかるか」という質問に対し、「130時間」と答え、正確に130時間でやってのけたことである。その後のつきあいで、科学や医学的知識、枕草紙や源氏物語などの古典から第二次世界大戦に突入する日本人の心情など、様々な知識が体系化されて頭の中に入っていることも分かった。天才としか言いようがない。

(4)10年以上前になるが、中学校で理科を教えている50歳ぐらいの方が英会話を習いたいと言ってきたことがあった。基礎能力をチェックすると、中学1年生3学期程度の学力だった。そのため、「年齢と基礎能力から考えて、うちで英会話を勉強しても、聞こえるようにも、話せるようにもなりません」と説明した。すると、「大学を卒業してから長年に渡って、ピアジェの心理学に関する論文を提出してきた。お世話になっている大学の教授が、『君も後数年で退職になるようだが、今中学校を退職して、ロンドン大学に1年留学すれば、うちの講師として働けるようにしてやろう』と言っている。聞こえなくても、話せなくてもかまわないから、何とか留学できるようにしてもらえないでしょうか」と打診してきた。そこでロンドン大学で師事することになっているダフェット教授が書いた本で、授業に使えそうなものを5冊送ってもらい、日本語に訳して差し上げた。また、書いた論文の中から良さそうなものを数点持ってきてもらい、ダフェット教授が行った実験を追試するような論文を選んで英訳した。英会話の授業は会話の習得ではなく、外国人に慣れることを目的に簡単な応答練習を行った。

以前何度か企業の研究者が書いた論文を英訳したことがあったが、どう訳して良いか分からなくて、電話で問い合わせなければならない事態に必ずなった。いつも原因は、研究者が自分の業績をあいまいな表現を使って過大に表現しようとするためだった。この話を一橋大学で4年間首席で通し、大学教授をしている友人に話すと、「耳が痛い」と言っていた。要するに、日本の学会においては、論理的厳密性を持たない論文が許容されるだけでなく、論理性の曖昧さにあまえて、業績を過大に表現することが慣行化されていることを認めたのである。中学校の先生が書いた論文も全く同じ傾向があったため、実験のデータだけを使って、論文を書き直すしかなかった。要するに、論理構成と結論を変えてしまったのである。僕の書いた英文を読む能力がなかったためか、中学校の先生が問題点を指摘することはなかった。

ダフェット教授は20世紀最大の心理学者だったピアジェ研究の第一人者であったため、有名大学からダフェット教授の下に留学した日本人教授は少なくなかったと推察される。しかし、日本人として初めて家に招待されたのは、この中学校の教諭であった。ロンドン大学に留学して1週間ほどした頃だという。そして1年後に帰国するまでに、合計5回招待されることになった。帰国すると、ダフェット教授の新しい論文は、全て彼のところに来るため、心理学会では重要な存在になったようである。しかし、彼は英語が読めず、書けず、話せないため、僕の書いた論文が認められたとしか考えようがない。なぜなら論文の内容は、ダフェット教授が行った実験を日本人の中学生に行っただけのものであるため、新規性が全くないものだったからである。

(5)しかし、この論文は他人の論文なので公開はできないし、僕が海外で通用するような英語の論文が書ける証拠にならないことは明白である。そのため、英作文.netを立ち上げる前に、海外で評価されるような論文を書かなければと思ったが、博士号もなく、研究施設がない者が論文を書いて海外で評価を受けることは至難であった。しかし、新型インフルエンザ騒ぎが起こり、 CDC(米国疾病予防管理センター)のホームページにスペイン風邪に関する論文「1918 Influenza: the Mother of All Pandemics<http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/12/1/05-0979_article(リンク確認日:2014/6/22)>」を発見するという幸運に見舞われた。この論文には「1918年にパンデミックを起こしたスペイン風邪は、90年以上に渡って研究され、ウイルスの全ゲノムが解析されたにもかかわらず、多くの謎が未解明のままになっている」と書かれていたので、その謎を解くための論文を書いて、CDCとWHOなどに投稿してみた。

この論文には、スペイン風邪のゲノムの解析に世界で初めて成功した Dr. Taubenberger の「1918 Influenza: the Mother of All Pandemics<http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/12/1/05-0979_article(リンク確認日:2014/6/22)>」を参考文献として付けたが、この参考文献が理解できないと、僕の仮説が持つ現代的意義が理解できないという問題があることがわかった。

というのは、趣味でやっている気功治療の患者に、大学の世界ランキングで東大より上にランクされるコーネル大学を卒業した方がいるのだが、僕の仮説と「1918 Influenza: the Mother of All Pandemics<http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/12/1/05-0979_article(リンク確認日:2014/6/22)>」を印刷したものを見せたところ、「これ、アメリカ人が書いたんですか」というコメントが返ってきた。コーネルを卒業していても、参考文献が読めないのである。印刷したものを差し上げたところ、1週間後に来たとき、「難しすぎて途中でギブアップしてしまいました」と言っていた。また、医学論文が何の抵抗もなく読める、当社の天才講師Clark先生も、分子生物学関係の用語に難解なものがあるため、完全には理解できないようだった。「これはまずい」と思った。「恐らく、僕の論文はCDCやWHOの責任者のところに行き着く前に、秘書の段階で破棄されてしまうだろう。」その対策として、論文を世界各国のインフルエンザに関する中央研究所のようなところに送ってみた。3週間ほど待ったが、どこからも返事は来なかった。

たまたま、NATUREでは、専門分野の審判員(referees)が直接判断するという記事をウェブで発見したので投稿してみると、返事が翌日来た。しかしながら、「NATUREに掲載できない(Regretfully, we cannot offer to consider it for publication in Nature.)」という回答だった。がっかりしたが、よく読んでみると、「NATUREを冠した他の専門分野の雑誌に原稿を転送できる」という申し出が書かれていた。

僕の友人で東大の医学部を出た先生がいるのだが、数年前にNATUREに論文を送ったところ、『「名誉のために書き直してください」という返事が来た』と言っていたので、僕の論文はNatureに掲載できるレベルの英文であることが認められたと解釈した。そして免疫に関する新しい概念「hierarchy of immunity」を提唱しているため、「Nature Immunology」を転送先として選んだ。

さらに、僕のNATUREのアカウントに「Nature precedings に招待する」というメッセージが届いた。注意書きを読むと「Nature precedings に論文が公開されても、審査に影響がない」と書かれていたのでアップロードすることにした。Nature precedings 用のアカウントを作ると、僕の論文のタイトルが表示され、投稿できるようになっていた。注意書きに、「ここで論文が公開されると、NATURE系の雑誌に論文が掲載されることに関しては問題がないが、他社の雑誌では掲載を拒否される可能性がある」という趣旨の説明があったが、注意書きに同意して原稿をアップロードし、僕の論文のPDFファイルがダウンロードできることを確認した。

ところが、翌日「Nature precedingsの責任者が最終的に論文の公開を取り消した」旨のメッセージがアカウントに届いた。招待しておきながら、なぜ取り消したのかという説明はなかったが、この責任者も参考文献が読めなかったものと思われる。その日の午後 Nature Immunology の Dr Jamie D.K. Wilson から、「Nature Immunology に掲載できない」旨のメールがあった。このメールには、なぜ掲載できないかについて「Nature Immunology does not publish short hypothesis-based articles」という明快な説明があった。また、「新規性がない」旨の指摘があったため、「仮説に新規性があっても、新規性のあるサポーティングデータがない論文はNATUREを冠した雑誌には掲載しない」というガイドラインがあることが推察された。さらにNATUREの名前を冠さないPhilSci Archive等にデータを転送してはという申し出があったが、NATUREの名前がないものに掲載されても、インパクトがないと思い、申し出には応じなかった。

不思議なことに、翌日 Genes and Immunity からも、「掲載できない」旨のメールがあった。誰かがGenes and Immunityに僕の論文を転送したものと思われる。

「名誉のために書き直してください」と言われた友人のケースと比べると、英文に対する批判的なコメントは全くなく、専門誌に転送するように3回も言ってきているので、仮説は専門家からそれなりに評価され、英文はNATUREを冠した雑誌に耐えうるレベルと判断されたと解釈している。

(6)アメリカ人も「1918 Influenza: the Mother of All Pandemics<http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/12/1/05-0979_article(リンク確認日:2014/6/22)>」が理解できなかった。
「2009年8月31日に、この仮説をお送りしましたが、お返事をいただくことができませんでした。参考文献1<http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/12/1/05-0979_article(リンク確認日:2014/6/22)>を一般の知識人が理解することが難しく、参考文献1が理解できないと僕の仮説が何を意味するかわからないため、あなたの秘書が破棄したのではないかと考えています。そのため参考文献1を読まなくても、僕の仮説が何を意味するか分るように書き直しました。」という意味の前書きをし、スペイン風邪の謎が私の仮説で説明できることを示したメールをCDCに送ったところ、下記のようなメールが届いた。

Thank you for your submission to CDC-INFO.
Your hypothesis has been forwarded to the appropriate parties at CDC for their information. They will contact you directly if they have any additional questions.

そして翌日、さらに、

Your comments have been forwarded to the appropriate CDC program for their information.

という内容のメールが届いた。これで、8月31日に送った仮説に返事が来なかったのは、アメリカ人でも Refference1が理解できなかったためであることが明確になった。

日本の国立感染症研究所を初めとして、世界各国の国立感染症研究所のような機関にも仮説を送ったが返事は返ってこなかった。しかし、黒人が大統領になれる国、アメリカからは返事が返ってきた。アメリカ文化においては、fair という倫理が重きをなす。「長いものには巻かれろ」という日本文化と対照をなすアメリカ文化においては、僕のような素人が書いた論文でも、それなりの書き方をすれば、返事が返ってくるのである。

11.なぜ欧米人から評価される英文を書くことが可能なのか。

(1)中学校で習う英語

ETSの会員の一人に高校で英作文を指導されている先生がいる。普通の英語の先生がしない授業をしている貴重な先生なので、高校生が間違いやすい英作文を文法事項に基づいて体系化していただいている。先日、この先生がいらしたとき、「生徒に英文法を教えようとすると、『なぜ英作文の時間に英文法をやるんですか』と質問する生徒がいる」という話が出た。「英文法が分からなければ、英作文はできない」ということは、お互いに自明の理であるが、この原理が分かっていない高校生が意外と多いようだ。

僕の英語学習は中学1年のとき始まったが、英語はどのように勉強すれば良いのか理解できなかった。中学3年の夏休みに、受験対策として旺文社で出していた文法書を読んでから、文法に関しては理解できるよになったが、何語覚えなければならないのか見当が付かなかった。そのため、高校を卒業するまで、英語は苦手な科目に入った。成人してから独学で英語が話せるようになり、習得のために何が必要かということが分かったことと、文部省が英語教育に関してどのような考えを持っているのか、受験問題を作る人がどのように問題を作るのかなどが推察できるようになったこととで、ようやく何語覚えれば良かったのか、どのように勉強すれば良かったのか分かるようになった。

英語を話したり、英文メールを書いたりするには、中学で習う英語が基礎になる。明治五年に学制を施行してから140年近く経過しただけあり、中学校の英語の教科書は良くできている。20年ほど前、中学校で使われている教科書を5種類集め、使われている構文と単語数を分析したことがある。構文総数は約150で、使われていた単語数は、当時、指導要領には650語前後の単語を教えるように書いてあったが、どの教科書も1000語ぐらいの単語を使っていた。

英語ができない人は、中学校の教科書に出てくる基礎構文が文法的に理解できていないことが多い。このタイプの生徒は、前置詞句が出てくる1年生の3学期頃から英語が分からなくなる。同様の機能を持った日本語の助詞が後置詞で、日本語の語順とは異なるため、感覚的に分かりづらいのが原因である。中学レベルだと丸暗記に走ればそれなりの点数は取れるが、高校に行くと学習量が増えるのでどうにもならなくなる。

もう一つのタイプは、幼児期に英会話スクールに通っていた生徒で、中学1年の1学期は通信簿が5になることが多いのだが、意味が何となく分かるのが災いとなって、文法的に英語を理解しようとしないため、2学期から成績が落ちてしまうことが多い。

20年以上前の話になるが、銀行のお偉いさんの紹介で、北島三郎さんの末娘のレイコちゃんを教えたことがある。お母さん似の美人で、とても中学1年生とは思えないような、独特の雰囲気を持った子だった。お母さんの話だと、中学1年の1学期は通信簿が5だったのが、2学期には3になってしまった。レイコちゃんがアメリカにホームステイをしたいと言っているので、通信簿が5になったら行かせてあげると注文を付けたとのことだった。本人がやる気があるので、1回2時間、週3回という条件でレッスンを引き受けることになった。

レッスンは、レイコちゃんが使っている八王子市立中学の教科書とアメリカ人高校生の生活が2000語レベルの英語で書かれているものを使った。後者は中学1年生には難しいが、アメリカにホームステイするには2000語の語彙は必要であるため、意味を説明した後、家で書き取りを行わせ、次のレッスンで内容について応答練習をして、自然な英語が音声で記憶に残るようにした。

レッスンを始めてすぐ気がついたのは、レイコちゃんは英文の意味が何となく分かるというところで満足し、英文をアメリカ人が理解するように、一語一語正確に理解しようとはしていないことだった。英文を頭から、アメリカ人が理解する順序で、正確に理解するには応答練習が効果的なのだが、レイコちゃんのように幼児期の英会話学習で、英語の意味が何となく分かるようになった生徒は、十分理解できていないということに本人が気がつかないまま応答練習も何となくできてしまうのである。その解決手段として、レイコちゃんの教科書に出てくる文ごとに、英作文の問題を作った。効果はてきめんだった。前置詞の意味や用法を考えなければ、英作文はできないのである。また、英作を大量にすることで、英語と日本語の構造的な違いが明確に分かるようになった。

その結果、1年生の3学期には成績が4になり、2年生の1学期には5になった。そして、レイコちゃんはその夏アメリカでホームステイをすることになった。

この後、英語ができないという高校生を同じ方式で教えたが、中学生レベルの英作文と2000語レベル音声訓練で3ヶ月経つと、全員「高校の英語が分かるようになった」と言って感謝の意を表してくれた。この経験により、中学レベルの英語を徹底的にたたき込めば、英語が苦手な人でも、自然に高校レベルの英語が分かるようになることがわかった。要するに、中学で習う英語は、高校で習う英語の土台になっているため、中学英語の理解の仕方が適当だと、高校英語で問題を起こすのである。

当時中学校で650語前後の単語が必修単語だったが、アメリカ人が書いた英文を分析すると、使われている単語の75%は中学校の教科書に出てくるような500語の基本単語である。650語前後の単語を必修単語としたのは、それなりの意味があったのである。

僕の書く英文は、中学の英語の教科書に出てくる構文を使い、中学の教科書に出てくるレベルの単語を使って書く。普通の方と違うのは、英文を書くとき、「GO」や「COME」のような中学1年生でも知っているような単語でも、用法に自信がないときは「LONGMAN」という英英辞典でチェックするという点にある。

僕の論文の参考文献2は、WHO(世界保健機関)のライティング・グループが書いている。参考文献1のDr. Taubenberger が書いた「1918 Influenza: the Mother of All Pandemics<http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/12/1/05-0979_article(リンク確認日:2014/6/22)>」に比べると、遙かに平易で理解しやすい。科学という観点からは両者とも価値ある論文だが、英文のレベルとしては歴然とした違いがある。前者はプロのライターが書いた論文で、後者はアマチュアのライターが書いた論文である。また、知識階級は20,000語レベルの新聞を読み、労働階級は5,000語レベルの新聞を読むと言われるイギリスにおいてさえ、プロが書いたと思われるウェブページは平易な分かりやすい英語で書かれている。

「平易な分かりやすい英語で書く」という傾向は、プラグマティズムを哲学とするアメリカには元々あった。しかし階級によって話す言葉さえ異なるイギリスで1970代に、公文書を平易で分かりやすい英語にしようとするPlain English<http://en.wikipedia.org/wiki/Plain_English(リンク確認日:2014/6/22)>の運動が始まったのは、「平易な分かりやすい英語で書く」ことを哲学的信念とするバートランド・ラッセルが1950年にノーベル文学賞を受賞したことが大きく作用したためと思われる。1990年代に、インターネットが一般に普及するようになると、専門分野の論文においてさえ、「初心者は専門用語を使って、ベテランは誰もが分かるやさしい単語を使って書く」ような傾向が顕著になった。ホームページのアクセス数を増やすには、誰でも理解できるように「平易な分かりやすい英語で書かれていること」が必要条件になるからだ。僕の論文がアメリカ人やイギリス人から評価されるのは、この潮流のためだ。中学英語で、読む価値があると思われることをネイティブ・スピーカーが平易に分かるように書くと、結果的に究極のPlain Englishになり、プロが書いた文章として認められるからである。

※ 聞くだけで上達するという「~ラーニング」のコマーシャルに出ているプロのゴルファーが、ある番組で、これを英語で言ってくださいと司会に言われたら「勘弁してください」と言っていた。これを見て、「~ラーニング」がテレビでコマーシャルを流すほど売れていても、「本当に話せるようになるのか?」と疑問に思った方が多いと思う。「ネイティブが吹き込んだテープやCDを聞いているだけでは、まともな英語は話せるようにならないだけでなく、明確に聞こえるようにもならない」のは自明の理だが、彼の知的能力から推し量れば、海外旅行が一人でできる程度の英会話力はあると思われる。しかしその程度の英会話力なら一般の英会話教材で勉強しても、彼の能力から推し量れば、身についたのではないかと思われる。

(2)哲学

中学校の国語の先生が西田哲学の信奉者だったので、「絶対矛盾的自己同一」などについて話されることが時々あった。父も無門関に若い頃から傾倒し、座禅を組んだり、滝に打たれたりして修行しただけでなく、晩年には得度して僧になり、高尾山薬王院を代表し、京都の智積院でキリスト教を含む各宗派の代表の前にして説教をするほどだった。

この二人の影響を受けたためか、高校に入ると授業はそっちのけで、哲学書を読みふけった。当時は、人生の目的が分からなければ、学業を続けるべきかどうかさえわからないと考えていたので、受験勉強などには一切関心を払わないようにしていた。

英語の論文を書くにあたって役に立ったのは、デカルトとカントの西洋的な論理だった。デカルトは数学の論理的正しさは何に基づくのかを分析し、カントは科学の認識論的正しさを分析して、厳密に論理的な学としての哲学を確立しようとした。バートランド・ラッセルが指摘するように、二人とも誤りを犯しているのは間違いないが、厳密な論理を基本とする西洋哲学の考え方と方法論は鮮烈だった。以後、哲学的思索をするときだけでなく、文章を書くときにも、厳密な論理を貫くようになった。

(3) アメリカ口語教本

アメリカ口語教本は、著者のウィリアム・L・クラークが桜の聖母短大、早稲田大学、東京大学などで英語を教えた経験があるので、日本人の英語能力をよく考えて書かれている。そのため10冊を超える当社の教材があるにもかかわらず、長期に渡って学習できる中学生や高校生には、自然な英語の感覚を身につけさせるために必ず暗記させていた。

丸暗記すれば、英語を話すときに、そのまま使える場合もなくはないので、暗記した方がよいというのは誰でも理解できるが、アメリカ口語教本はストーリーが長くて、簡単には暗記できない。そこで、生徒に暗記させる前に自分で暗記し、お互いに教科書を見ないで、自分のパートを言うという方法で生徒が暗記できているかどうかをチェックした。1カ所でも間違うと翌週もう一度やらせたが、できずに止めた生徒は一人もいなかった。毎日マンツーマンで繰り返しこの作業をしたおかげで、アメリカ口語教本の入門編と中級編は頭に染みついてしまった。その結果、日常会話に使われる単語や表現の感覚が身につき、英文のスタイルが感覚的に分かるようになった。ネイティブスピーカーは、日常会話レベルで英文を書くのが基本で、そこからどの程度離れた表現をするかがスタイルになるからである。

これと対照的なのが大学受験用のデルタン的学習方である。単語を能率的に暗記できるが、英作文のときにユーセージの間違いを犯したり、文脈による予測力がつかないためヒアリングの能力が上がらない原因となったりする。英検やTOEICで高得点を取ろうとすると、デルタン的勉強は避けられない。デルタン的勉強は、英文を読むためには効率的な方法かもしれないが、英会話教育や英作文教育では問題を起こすのである。

(4)やさしい英文を繰り返し読む

「(1)中学校で習う英語」に書いたように、英語の勉強の仕方が分からないので、辞書を引いたことがなかった。大学生になって、バートランド・ラッセルが書いたPrincipia Mathematicaに興味を持ったのがきっかけで、辞書を引くようになった。高校に入学したとき、買ってもらった旺文社の辞書がバリバリ音を立てたことを今でも覚えている。

そのうち英会話に興味を持つようになり、英会話スクールに通ったが、半年通っても、話せるようにも、聞こえるようにもならなかった。そこで、日本にいて話せるようになった人を探して話を聞き、どうすれば話せるようになるか仮説を作り、その仮説に基づいて1年ほど自己訓練してみると、よどみなく外国人と英語で話せるようになった。

自己訓練の一つとして、日本語で言いたいことを、中学校で習うようなやさしい単語だけで表現できるように因数分解して、簡単な英語表現に分けて話すことができるようにするという事項があった。しかし中学校の教科書に出てくるような単語の意味は覚えているものの、自分が知っている単語が直訳と言われる日本語的文脈では使われないことが多く、単純な解決策は見つからなかった。哲学的な観点から言えば、言語表現は認識されたものの写像であり、日本語表現と認識されたものの間や英語表現と認識されたものの間には対応関係があるが、日本語表現と英語表現の間に対応関係がないのである。

問題解決への第一歩として、やさしい英単語がアメリカ英語では、どのように使われるか学習するため、1000~2000語レベルで書かれている本を繰り返し読んだ。また、アメリカ人が日常頻繁に使う単語は約2000語なので、英会話を始めて3年間は、2000語レベルを超えるようなものは、絶対に読まないようにした。このトレーニングが、今考えると、中学校レベルの英語で、英文を書く基礎の一つになっている。

(5)言語と異文化問題

26歳のとき、始めてアメリカ人講師を雇って、成人向け英会話教室を開いたが、そのとき雇ったベテランのアメリカ人講師は、若い僕を見て、「問題が起こっても、生徒に『I'm sorry』と言ってはいけない」というアドバイスをしてくれた。英会話教育における異文化問題の重要性に気がついたのは、この瞬間だった。

この瞬間、このアメリカ人は、日本の職場で問題を起こしたとき、言い訳をしないで、一言「I'm sorry」と言いさえすれば、辞めずに済んだものを、言わなかったために、僕が経営する小さな英会話教室で働かなければならなくなったのかも知れないという考えが頭に浮かんだ。

これとは反対のケースだが、アメリカの会社で「I'm sorry」と言ったために、その場で首になったという話を聞いたことがある。言い訳をすれば、やる気だけは認めてもらえるのがアメリカ社会である。「good excuse」が言えなければ、「やる気がないやつだ」と思われ、首にされても仕方がない。「I'm sorry」と言って、自分のミスを認めてくれれば、裁判で争っても有利なので、会社側も安心して首を切れるということだろう。

日本の会社がアメリカの会社とトラブルを起こして、メールを送らなければならないときにも、同様の問題が起こる。正しい英文が書けても、日本人的な感覚で安易に「I'm sorry」のような文言を書いてはいけないのである。

言語には文化を写す鏡のような側面がある。日本語と英語を比較すると、日本語の基礎構文には話し手の主観的な表現であることを示すための助詞や助動詞が付随しているが、英語の基礎構文にはそのような機能はなく、think, guess, suppose などの話し手の判断を示す動詞や助動詞を使った仮定法的表現を使って、話し手の主観的な表現であることを示さなければならない。日本語が主観的認識を表現するため言語であるとすれば、英語は客観的事実を表現するための言語なのである。

鎌倉時代の禅僧、道元は自己の認識の仕方を分析し、存在と時間の不可分性に到達していたことが、彼の著書「正法眼蔵」の「空時」という章を読むと分かる。西洋哲学において存在と時間の不可分性について書かれたのは、ハイデッガーの「存在と時間」が初めてだと思われるが、アインシュタインの相対性理論が発表されてから20年以上も後のことである。

主観的認識を表現するための言語を使う人にとって、主観的に認識されたものの記憶がなければ、時間という概念は存在しないという結論に到達するのは、さほど難しくない。しかし客観的事実を表現するための言語を使うヨーロッパ言語圏においては、時間を客観的に流れるものとしてとらえることは容易でも、人間の主観的な認識とその記憶に基づく概念として時間をとらえることは容易ではなかったのだろう。

日本人は、科学的であることを盲目的に信仰する人が多いにもかかわらず、主観的認識を表現するための言語と日本語的なコミュニケーションの中で生活しているため、言葉を信頼しないという傾向がある。日本人にとって、古来理想のコミュニケーションは「以心伝心」であり、衣食住を共にしない限り、完全なコミュニケーションはできないとされている。また、議論や口論は成熟した大人としては避けるべきものとされている。都市化により、個人の意志を尊重するようになった現代社会においても、基本的な考え方は変わっていない。成熟した大人に要求される「気遣い」は、相手の気持ちを話さなくても理解できるという以心伝心的能力を前提にした、議論や口論を避けるための日本人的処世術以外の何者でもない。

昔、日本人の母親とアメリカ人の父親を持つバイリンガルの女性に、日本語と英語を話すときの違いについて聞いたことがある。英語を話す難しさを日々痛感していた僕にとっては衝撃的とも言うべき答えが返ってきた。「日本語を話すときは思いついたことを、そのまま言葉にすればよいが、英語を話すときは熟慮した上で意志決定をして話さなければならないので、日本語を話す方が楽だ」と言ったのである。

「日本語を話す方が楽だ」と言う原因は二つある。英語を話す文化においては、以心伝心的能力はないという前提の下に話さなければならないため、どのように表現すべきかを話し手が熟慮しなければならないことと、日本語は調整型のあいまいな表現が許される言語だが、英語は自己主張型の断定的な表現が要求される言語であることだ。

この言語観の違いは、アメリカ人を雇うと現実の問題となる。日本人は、仕事について指示すれば、無意識のうちに相手の言うことを理解しようと努力する。そのため、雇用時に能力や性格を把握すれば問題が生じないケースが多い。ところがアメリカ人の場合は、優秀で性格が良い人でさえ、言ったこと以外は上司の思惑を考えずに行うため、問題が生じることが少なくない。また、仕事の内容を書いたマニュアルを渡しても、自分流に理解する以上の努力はしないのが普通なので、おおざっぱなポイントだけを書いて渡すと問題が生じることが少なくない。自己主張型の言語を話す文化の中で育った人が、日本人のように他人の心を推し量って行動することはまれである。

そのため、仕事など利害関係が絡むことに関して英文を書くときは、裁判になったとしても負けることがないように、簡潔明瞭に書かなければならない。また、書かなかったことについて、後から「(日本人の)常識からすれば、当然~だ」と言っても、主張は通らないので、考え得る限りの状況を想定した上で書くことも重要だ。

バイリンガルの女性が日本語を話す方が楽だと言ったもう一つの理由は、日本語は調整型のあいまいな表現が許される言語だが、英語は自己主張型の断定的な表現が要求される言語なので、話す前に自分の意見を明確にするという作業をしなければならないことだ。

日本語には人間関係を悪化させないような機能があり、質問に対して、「ええ」のような、「yes」でも「no」でもないような答え方もできるし、構文においても、主語を明確にする必要もないので、「そういう意味で言ったのではない」と最初の意図を後から否定できるように曖昧な言い方をすることも可能だ。また、否定文か肯定文かを決定する部分は、文の最後に来るから、相手の顔色をうかがって、否定文で言うはずのところを肯定文にしたり、肯定文で言うはずのところを否定文にすることさえ可能である。要するに、日本語は、人間関係を悪化させないように曖昧な表現ができる調整型の言語なのである。ところが英語では、「yes」 か「no」を最初に明確にしなければならないし、否定文を作る助動詞は、文頭に近いところに来るから、日本語で可能な曖昧な表現をしたり、相手の顔色に合わせて、否定文で言うはずのところを肯定文にしたり、肯定文で言うはずのところを否定文にすることは難しい。英語は自己主張のための断定型の言語なのである。そのため、英文を書くにあたっては、自分が日本語で言いたいことの中から、断定的に言えることだけを抽出し、幾何学の証明問題を解くときのように、抽出した項目を公理として定義を導き出すような形で英文を書き、日本語のちょっとしたニュアンスを切り落とすだけでなく、断定的に言えないことは書かないようにすることが重要である。

日本人は、意見が食い違ったとき、一度は同意しながら後に蒸し返すということを許す人間関係微調整型とも言うべき文化を持っている。これを断定型の言語を話すアメリカ人にやると、信頼を失うことになる。一度断定的に主張したことは、簡単に意見を翻すことが許されない。そのため、英文メールなどで交渉するとき、安易に相手の言ったことに同意するような文面を書かないようにすることは重要である。

天才Clark先生を雇う前に、アメリカ英語の文法についてメールで徹底的に議論をし、東大の大学院に通っていたアメリカ人女性とは、仕事の内容について徹底的な議論をした。議論をすることで、雇用者側は相手の能力を査定できるし、仕事に対する基本的な考え方なども分かってくる。雇用される側としては、やりたい仕事ができるのか、会社の基本方針中で受け入れられないものがないかなど、情報を事前にチェックすることができる。このとき肝要なのは、相手がいかに有能で性格が良いことが分かったとしても、相手の主張に違和感を覚えたら、速やかに交渉を打ち切ることである。これができないと、完璧と言えるようなメールが書けたとしても意味をなさない。後で大きな問題に発展し、新たな人材を求めなければならないなど、経済的打撃を招く可能性が高いからである。

この二人の場合、経済的に恵まれていたため、条件闘争は起こらなかったが、一般的に言えば、有能なアメリカ人は、「shrewd;抜け目がない」であり、仕事の内容が気に入れば、話が進んだ段階で、「他の会社から話があって・・・」などのような、給料を引き上げるための交渉を仕掛けてくる場合がある。日本人は、話がまとまりかけたところで、あからさまに条件闘争を仕掛けられると、むかっとする場合が多いと思うが、「shrewd」であれば、仕事をさせても抜け目なくやり、会社の利益に貢献するというのがアメリカ的な考え方なので、性格的に問題があるわけではない。当社の場合は、予算が決まっているので、給料に関して条件闘争を仕掛けてくる人は切ってしまい、新たな人材を捜すことにしているが、条件闘争をしかける人は有能なので、予算に余裕がある会社は雇ってもいいのではないかと思う。

(6)大量に英文を書く

教科書を大手の出版社がするような方法で作ると、当時500万円ぐらいかかった。また、 Longmanなどの外国の出版社が作ったものは、一見教科書らしく見えるが、実際に使ってみると、日本人の英語教育のレベルを分析せずに作ったと思われるものや使いづらいものが多かった。そのため市販のもので、使いやすいものが見つからない場合は、僕が原稿を書いて教科書を作り、アメリカ人講師に使わせていた。教科書を10冊も書くと、それなりの英作文力はつくものである。

また、当社は個人レッスン専門の英会話教育をしていたが、一つだけ上級者向けのグループレッスンをしていた。英検1級を持っていたり、英語の文法書を出版したり、TOEFL専門の学院で講師をしているなど超上級と思われる生徒がいたので、FENのニュースをテープに取って書き下したり、The Japan Times や The Asian Wall Street Journal の記事を使ったりして、問題を作らざるを得なかった。毎週問題を作るのだが、使う前日にアメリカ人講師に最終チェックを入れてもらうようになることが多く、問題作りに追われる日々が数年間続いた。FENのニュースには聞き取れないところがあったり、The Asian Wall Street Journal の記事は難解なものがあったりして苦労することが多かったが、今考えると、この経験も無駄ではなかった。

(7)Google USA

Google USAで自信がない表現を""で括って検索すると、検索結果から表現が適切かどうかを判断できることに気がつき、英作はだいぶ楽になった。

例えば、「The number of the people WHO can be infected is as follows.」の中の「people」の前に「the」を付けるべきかどうかで迷った場合、Longmanで「number」の用法を調べるのが第一ステップだが、「The number of 」の用法については何も書かれていない。そこでGoogle USAに"The number of people WHO"とキーワードを入力してGoogle USAで検索すると、190,000件ヒットするが、"The number of the people WHO"では、877件しかヒットしない。おまけに、上位に来ているサイトは、インドやアフリカ、南アフリカなどのサイトである。こういう場合は、「the」を付けないで、「The number of people WHO can be infected is as follows.」とすれば、間違いがない。

また、アメリカ人に英文をチェックしてもらうと、確信を持って書いた英文が直されることがある。この場合も、Google USAを使って検索し、アメリカの公官庁や大学などのサイトに出てくれば、反論ができる。

日本の Googleで同じことをやると、ネイティブでない人が書いた英文がヒットする確率が高いので、ヒット数の比較だけで判断するのが難しいケースが出てくる。

12.英作文はどのように学習すべきか

(1)基礎英文法の習得

東大の医学部に入学できるような基礎文法を完全に習得した人でも、英文を書くのは難しいことを「5.東大の医学部を出ていてもまともな英文は書けない」で説明したが、これは英作文に基礎文法が必要ではないということを意味するものではない。むしろ、東大に入学できるレベルの文法力がなければ、まともな英文は書けないと言った方が真実に近い。

東大に入学できるレベルの文法は、他人が書いた英文を読むための文法なので、カバーしなければならない領域が広い。ところが、英文を書くための文法は、自分が書くとき必要とするものだけでいいので、覚えなければならないことは、遙かに少ない。例えば、過去完了や現在完了、分詞構文、関係代名詞などは、使わなくても英文は書ける。そのため、英文を書くための英文法は、覚えなければならない項目を少なくした、コンパクトなものにすることができる。

大量に英文を書き、ネイティブ・スピーカーにチェックしてもらうと、必要最小限の文法は何かということが自然に分かるようになる。僕の経験から言えば、中学3年生の英語の教科書に出てくるような英文が書ければ、英作文をするための必要最小限の文法はマスターしていると考えて良い。しかし、中学3年生の英語の教科書が問題なく読めるのと書けるのでは大きな違いがある。その違いを知るには、大量に英文を書き、ネイティブ・スピーカーにチェックしてもらうのが一番だが、現実的でないと考える人が多いと思う。こういう人のために、大量に英文を書き、~ 5月に公開予定の英作文.netでは、「基礎文型を使った英作文1~3」を用意している。

「11.なぜ欧米人から評価される英文を書くことが可能なのか。(1)中学校で習う英語」に書いたように、北島三郎さんの末娘のレイコちゃんを教えたのがきっかけで、当時中学校で使われている教科書を5種類集め、使われている構文を147種類に分類し、分類に基づいて約1500問の英作の問題を作成した。僕が使う基礎構文は、このときの147種類を超えることはない。この基礎構文を使うのに必要な文法だけ覚えれば、英作文用の英文法としては十分なのである。

英作文.net、初心者コースの「基礎文型を使った英作文の練習(1)~(3)」は、この147構文に基づいて作ってあるので、全問正解であれば、英作文に必要な最小限の文法をマスターしていると考えて良い。また文法が苦手な人は、間違うと文法的な説明が出てくるので、英作文に必要な最小限の文法を効率的にマスターすることもできる。主語や動詞などの文法用語が分からない方には、入門者コースとして、小学5・6年生から勉強できる「やさしい英作文法」も用意してある。

(2) 基礎単語のユーセージの習得

東大の医学部に入学できるような基礎文法を完全に習得した人でも、ネイティブ・スピーカーから認められるような英文を書くことができないことを「5.東大の医学部を出ていてもまともな英文は書けない」で説明したが、この問題は単語のユーセージ、すなわち、単語がどのような文脈で使われるかということを把握していないために生じる。

例えば、「I put on the cap.」は、日本語では「私は帽子をかぶった」だと習ったアメリカ人が、「I put on the pants.」 と言おうとして「私はパンツをかぶった」と言う可能性がある。この間違いは、「かぶる」という動詞がどのような文脈で使われるかが分かっていないために、言葉を変えれば、「かぶる」という動詞のユーセージが分かっていないために起こる。この例は、アメリカ人が日本語を話すときの場合だが、日本人が英文を書くときにも、同様の問題が起こる。単語の基本的な意味を知っていているだけでは、基礎文法を習得していても、自然な文章を作れないのである。

この問題を避けるには、書くときに使う単語のユーセージを習得する必要がある。Longmanの英英辞典では、全ての見出し語が約2,000の定義語で説明されている。これは約2,000語のユーセージを覚えれば、大きな間違いはせずに、英文が書けることになる。

記憶力に自信のない人は、100語のユーセージを覚えるだけで、間違いの少ない英文を書くことができる。アメリカ英語で書かれた文献に出てくる単語の約50%は、中学校の教科書に出てくるような、やさしい100の単語なので、この100の単語のユーセージに習熟し、100語を超えるようなレベルの単語を使うときは、Longmanの英英辞典でユーセージをチェックすれば、間違いの少ない英文を効率的に書くことができる。自分が書く文章なので、100語の単語を組み合わせた熟語を使うなどして工夫すれば、60%以上カバーすることが可能だろう。

記憶力にある程度自信のある方は、500語の基礎単語のユーセージを暗記すれば、約75%をカバーすることができる。自分が書く文章なので、工夫すれば、80%以上カバーすることが可能だろう。

英作文.netの上級者用のコースのトレーニングでは、上述の基礎単語と熟語のユーセージを網羅的に練習する。"go"や"come"のような本当にやさしい単語のユーセージだが、日本人が間違いやすい問題にしてあるので、東大に入学できた方でも簡単にはできないと思う。

(3)英会話は英作文の敵

英会話を短期間でマスターできる人は少ない。しかし、5000語を超える語彙があり、頭の中で直訳的な英作文ができる人は、短期間で英語が話せるようになる。ときどき、このタイプの人が「英語は話せるけれど、英語が聞こえない。何とかならないだろうか」と言ってETS英会話スクールに入会してくることがある。

このタイプの人は基礎文法や語彙に問題がないので、適切なトレーニングをすれば半年ぐらいでヒアリングの能力は向上する。ところが英語が聞こえるようになると、英語がアメリカ人の先生に通じていないことに気がつき、「発音をよくするにはどうしたらいいのでしょうか」と聞いてくる。テープレコーダーが一般に普及した1960年代以降に英会話を始めた人で、発音が悪いために英語がアメリカ人に通じないという日本人は滅多にいない。通じない原因は、アメリカ人が言わないような言い回しで直訳的英語を話すことにある。これを2年、3年と続けると、誤った英語に何の抵抗もなくなり、間違った英文を平気で書くようになる。

この典型的な例としては、既に紹介した「アメリカの短大を4年かけて卒業し、アメリカ人と結婚した28歳の女性に、仮想の日記を英語で書かせたら、1行ごとに間違いがあった」という当社の社員のケースがある。

この問題を避けるには、英会話を始める前に英作文の勉強を始めることが必要だ。英語が流暢に話せるようになってから勉強しても、越えられない壁にぶつかってしまう。このことがよく分かっているのは、アメリカに留学しようとして、英会話を勉強してから、アメリカ人が採点する TOEFLエッセイの試験を受けた人達だろう。いくら勉強しても、どうしても超えられない点数の壁にぶつかる場合が多いと推察される。

英会話をこれから勉強しようとする人や既に始めてしまった人のために、英作文.netには、下記のような英会話用の英作文を用意してある。

●英会話学習のための英会話:このコースは、英会話のレッスンを外国人講師からスムーズに受けるためのもので、生徒と先生の会話で構成される75課の授業風景よりなる。

●旅行会話:このコースは、海外旅行に必要な英会話力を養うためのもので、税関やタクシー、ホテル、食事、ショッピングなど旅行に関する50のダイアローグで構成される。

●エリカの日記:英会話スクールで、初心者が目指す「日常会話ができるレベル」というのは、一人で海外でショッピングをして帰れる程度のレベルを指す。売る側は、売るための努力を惜しまないので、話そうという意志さえあれば、会話は成り立つ。ところが、アメリカに住むのに必要な「日常会話ができるレベル」は上級レベルであり、日常生活に関するあらゆる事柄が言えなければならない。「エリカの日記」は、上級レベルとしての日常会話ができるようになりたい人のために、日本人大学生、エリカの日常生活を日記のスタイルで書いたものである。この原文はアメリカの短大を4年かけて卒業し、アメリカ人と結婚して、幼稚園に行く子供のいる28歳の女性が書いたものだ。間違いが多かったため、毎日ウィークリーにコラムを持つ当社のYoung講師が校正し、さらに彼女が訂正されたものを読み、自分の意と異なるところを書き直し、また、Young講師が校正するということを繰り返して、ようやく完成した。しかし、できあがったものを読んでみると、この女性の感性が優れていたためか、アメリカ人の一流のライターが書いたようなできになっていて、読み物としても面白い。

●留学のための英会話:アメリカ留学をする人が必要な知識の説明と会話から構成される50レッスン。アメリカでは、三流大学に入っても英語力がつけば途中で一流大学に移ることもできる。そんなとき、どうしたらいいかなどについてのレッスンも含まれている。

●ビジネス英会話:コンピュータ関連製品の世界最大のディストリビューターの一つとして知られるTech Data Corporation でセールズ・マネージャーをしていた Kenneth Tomlinson 氏を雇用し、アメリカでの業務を会話形式で書かせたもの。これを「毎日ウイークリー」にコラムを持つ当社のYoung講師が校正し、応答練習とビジネスに関連する議論ができるようにして、英会話教材として再編集したもの。
※尚、英作文.netのコンテンツは、安心して学習できるように、全て「毎日ウイークリー」にコラムを持つティム・ヤング氏が最終校正をしている。

13.英作文.netの利用法について

(1)無料お試しユーザー登録をすると、11級から8級までの英作文検定試験と「誰でもできる初歩の英作文」を無料で学習できるようになっている。
(2)検定試験には、11級、10級、9級、8級、7級、6級、英語で学ぶ英会話検定試験、旅行会話検定試験、英文日記検定試験、ビジネス英会話があり、10000問を超える英作文の問題が用意されている。
(3)7級と6級検定試験の受験、及び「誰でもできる初歩の英作文」以外の学習コースを利用するには、有料登録が必要になる。有料登録に伴い、毎月会費3,086円を払わなければならないが、最上級(6級)に合格すると、月会費が免除される。
(4)7級検定試験の合格者には、英作.netを使って、英作文の家庭教師をしたり、英作文塾を開いたりする方法が用意されている。英作文.netがこのような英作文教育のためのツールを無料で提供するのは、「日本人がまともな英語を話すことができないのは、英語が書けないのが最大の原因であり、書くための英語教育をしない限り、国際社会で欧米人と互角に議論できる人材を育成することは難しい」と考えるためである。

株式会社渡辺米会話研究所
代表取締役 渡辺昇一